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失敗



どうやらナマエは仕事で何か遣らかしたらしい。帰ってくるなりソファーに飛び乗るように俯せで横になり動かなくなった。その所為でビール片手に座ろうとしていた俺はソファーの前で立ち往生している。ひじ掛けに放った腕に頭を乗せしばらくそのままだったが、俺が立ったままテレビを点けてチャンネルを変えているともぞもぞ動いてやっと顔が見えた。


「おい、なんだその葬式みたいなテンションは」

「…葬式出たことあるの?」

「ねえよ」

「ばか」


ふい、とナマエは寝返りを打って顔を反らした。当たり前だ。死んでも葬式なんてしない様な環境で育ってきたんだしな。


「座りてえんだが」

「うん」

「うんじゃねえ動けおら」


返事はするものの微動だにしなかったナマエを揺すると不機嫌そうに唸りずるずると頭を下げ、乗り切らなかった膝下をぶらりとソファーの端から垂らした。飽くまで起き上がる気は無いらしい。



ちっちぇえな、なんて思いながら髪を弄っていると何となく気怠そうにこちらに両手が伸びて来た。目はじっと俺の目を見ているが眉根は些か寄せられ何処か不機嫌そうだ。
ナマエが目を合わさないのは考えてる時か怒っている時か照れてる時、真っ直ぐ目を見て来るのは真剣な時か何も考えて無い時、それと多分甘えてる時。まったく、無表情なナマエからよくこれだけ読み取ってると褒めて欲しい。まあそんなとこに惚れてるんだから何も言えねえか。



そうして目を見たまま黙っているとナマエは眉根をもう少し寄せてぐいっとシャツの首元を引っ張た。

やれやれ、どうやらどうにかナマエを慰めないとならないようだ。


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