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二人それぞれ



「なんか匂いがちげえ」


朝食の後のフィンクスの一言だった。まだパンを齧っていたナマエはジャージを羽織るなり肩辺りを鼻に当てた彼を数秒間不思議そうに見ていた。強化系だということが関係しているのかは定かでは無いが、フィンクスは五感が優れている。自分のシャツの匂いを嗅ぐナマエは特に何も反応しないことからやはりそうなのかもしれない。
フィンクスがジャージを着てチャックを閉めたあたりでナマエも朝食を終え、少しぼーっとした後何かを思い出したように「そういえば」と呟いた。


「洗剤変えたかも」

「なんでかもなんだよ」


日用品に関してあまり拘りのないナマエにとって洗剤がどのような物かはどうでも良いことだった。逆に嗅覚や味覚がある程度敏感なフィンクスにしてみると時々変わる家の匂いや空気が気になる。決してナマエが鈍感な訳では無い。どちらかというとその逆だろう。気付かないのではなく、ただ興味な無い物には無関心。


「嫌いな匂い?」

「いや、嗅いだこと無え匂いだったから気になった」


ナマエが食器を片付ける傍らで冷蔵庫から飲み物を取るフィンクスはやはり少し匂いを気にしているようだった。そんな様子がナマエには何だか面白い。昨日か一昨日には血塗れで帰ってきたのに、彼を見ているとどんな人であろうと表裏があるということが分かって安心する。どちらが表だか裏だかは分からないが、自分にはそのどちらもが見えていると思うと胸が暖かくなるのであった。


「別にいいんじゃない。フローラルではないんだから」

「ん?どういうことだ」

「盗賊から花の香りは、何かねえ」

「…そういう問題かよ」


大雑把なくせに変な所拘るのは昔から変わんねえな…ともう一度ジャージの匂いを嗅いだフィンクスだった。


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