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二人で商店街を歩く。初めの頃は一人だったのだが、食料はほぼ自分のだからと大飯食らい、というか大酒飲みのフィンクスが着いて来てくれるようになった。私は人混みが好きではないが彼がずんずん進んで行く後ろに付いて行けば道が出来ていることに気付きジャージの裾を掴ませてもらっている。

それにしてもなんだか今日はいつもに比べて人が多い。この時間、つまり昼過ぎくらいとなると学生とか主婦くらいしか出歩いていないが、ちらほら男女、それに中年前後くらいの二人組が多い。


「フィンクス、今日って祝日?」

「祝日?俺が知ってると思うか?」

「望み薄」

「…じゃあ聞くな」


ビールの箱を肩に担いだフィンクスがぷいと体ごと視線を背けた。私も彼も祝日であろうとなかろうと生活に支障はほぼ無い。ただ変わるとしたら街中の人の多少くらいだ。んー、クリスマスくらいは知ってるんだけどね。
私も片手に袋を持ってフィンクスの隣を歩く。晴れてるけど寒いなあなんて呑気に考えながらふらりと商店街を歩く。


「あ」

「あ?」


思わず一つのワゴンで足を止めた。


「良い夫婦の日だって」

「なんだそれ」

「1、1、2、2でいいふうふ」


ワゴンに立ててある広告にはデフォルメされた夫婦のイラストと11月22日の捩り。はーそういうことかともう一度周りを見渡した。祝日ではないようだが、そこそこ知れてはいる記念日みたいだ。ワゴンには手袋とか靴下とか、少し肌寒いこの季節に送ったら喜ばれそうなものが寄せ集めてあった。


「夫婦ねえ」

「結婚している男女一組のことです」

「阿呆、それぐらい分かる」


空いている左手で頭を軽く叩かれた。
正直私には結婚というものが分からない。私にも彼にも戸籍は存在しないし必要なものなのかもわからないからだ。テレビとか雑誌とかで見る限りだと男女が同じ場所に住んでいるだけみたいに見えるから、今の私達も似たようなものなのではないかと思うけど。結局二人とも別に肩書きなんてどうでもよくて、自分の生きたいように生きてるようなもんだし。ただ今日少し、一般人だろうと盗賊や闇屋、例え動物だとしても、個で生きて行けるものはそういないと思った。
まったく、世間は浮かれるイベントでこんな悟るようなこと考えるなんて。そういうところにはもう少し同居人の気楽さを取り入れたほうがいいのかな?


「おい」

「ん?」

「済んだんなら帰るぜ」

「うん」


やっぱり一度手を引かれたら、もう独りにはなりたくないって思うな。よく分からないけど、そういうものだ。きっと結婚とか夫婦とかもそんなのの延長なんだろう。


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