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非周期的な微動



私の仕事が一週間も続くのは稀だ。今回の場合一箇所にあるものを各地に振り分けたので時間がかかった。フィンクスが一、二、またはそれ以上仕事に出掛けることはまあある。だからこそ久しぶりの長期間の外出で忘れていたことがあった。


「馬鹿」

「第一声がそれかよ」

「ただいま」


言いたくもなる。
余談となるかもしれないが、元々私は整理整頓が好きじゃない。私のノートパソコンを置く場所を作ったのはフィンクスだし、同じく本棚を拡張したのもフィンクスだ。ただそれは整頓するという方面においてだけであり、彼は家事は全くと言っていいほど出来ない。っていうかやらない。
その結果がこれだ。机の上には空の弁当箱や缶、床には雑誌。


「ごみ袋ある場所教えたよね」

「おう」


あっけらかんとしているフィンクスの頭をべしっと叩く。シャワーだけは浴びていたようだが、服はどうだか分からない。っていうか相変わらずジャージだから汚れているのか否か分からない。


「コンビニ弁当にビールってどうなの」

「あー」


こんな時に念能力って便利だなあと心から思う。テーブルを拭きながらゴミにオーラを飛ばして、包んで、ごみ袋に放る。雑誌を積み重ね始めたフィンクスも便利だな、とぼやくように呟いていた。

ごみ袋を閉めてから、世間一般には夕飯の時間だと気付いた。仕事帰りだしお腹すいたから何か作ろうか。そう思って後をフィンクスに頼み、食材が無いことに気付いて買い出しに行き、やっと夕飯にたどり着いた。玄関の端にごみ袋を置いてきたフィンクスが座って食事を始める。


思えば普通じゃない私達にとってこんな生活の方が変なのかもしれない。私もフィンクスと会う前は料理なんてしなかったし、こまめに掃除なんかもしなかった。相変わらず人も殺すけど、だけど確実に何か分からないものが変わっている。

少しだけ怖い。決して平和惚けしているつもりはないし、今まで非社会的に生きてきた自分がそう簡単によじれる訳は無いと思う。けど、


「お前の飯の方が美味い」


なんて言う彼がいれば、不思議とどうなっても大丈夫な気がする。


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