Law (2/2) ○月 ×日(火)
今日は船長たちの故郷について話を聞きました。船長やペンギンさん、キャスはノースブルー出身なんだそうです。私が生まれ育った温かい春島とは大違いの、とても寒いところだとか。
小さい頃の船長はどんな人だったんだろう。聞いてみたらとても難しい顔をされました。どうやら、あまり良い質問ではなかったようです。船長はそのまま食堂を出ていってしまいました。後悔先にたたず、とはよく言ったものです。
ペンギンさんやキャスは「気にするな」と言ってくれましたが、なんだか船長に悪いことをしてしまったと思います。
〇月 ×日(水)
昨日は結局船長に謝れなかった。どうしよう、嫌われたかな。早く謝りたい。
それと、船は無事にログポースの示す島に着きました。船を降りて買い物に行くと船長の後ろ姿を見つけました。
「船長!」
「……***か、何かあったのか?」
「いえ。あの、昨日はすみませんでした。野暮なことを聞きました」
「気にするな。俺は故郷をすてた、今更何があろうがどうしようが関係ない」
故郷のない、それは過去を捨てたということ。 そうしたら船長の帰るべきところは一体どこにあるというのだろうか。
「でしたら船長、それは船長の帰る場所がないということですか」
「それがどうした」
「……あなたの築き上げたハートの海賊団は、あなたの帰る場所にはなりませんか?」
「……***」
「ロー船長、わたしだけじゃない。クルー全員がそう思っている筈です」
だからそんな寂しいこと言わないでください。いつしか私をあの船のクルーの家族にしてくれたこと、共に戦ったこと、あそこは私の存在理由そのものなんです。だから、私たちもあなたの存在理由になりたいんです。
私は少し先にいる船長との距離を一歩詰めて、私を映すその鋭い目をまっすぐに見つめ返す。
「そうだな、それも悪くない」
すると、船長はそう言っていつものように口端をあげてニヤリと笑うと、踵をかえして船の方へ帰り始めた。
「……帰るぞ」
すれ違いざまに然り気なく渡された船長の長刀。ぶっきらぼうに、疲れたから持てと言ったけど、これって信じてもらえてるって思っても良いんですか?
「何してる。早くしろ」
「……はいっ!」
船長のあとを追って急いで走る。船に着くと、ペンギンさんとベポくんとキャスが縄梯子の下で船にもたれ掛かっていた。私たちに気が付いたのか、ベポくんが腕が千切れるんじゃないのかと思うほどモコモコの手を振るのが見えた。
「お帰りなさい船長、***!」
キャスが元気に言う。 ペンギンさんは私が船長の刀を持っているのに驚いたのか、一瞬だけ目を丸くするが直ぐにいつものポーカーフェイスに戻り「お帰り」と言って縄梯子に足を掛け船内に戻ってしまった。
ほらね、皆があなたの帰りを待っていてくれるんですよ。 私は隣にいる船長を見てから皆のあとを追って梯子に向かう。
「お前は言ってくれないのか?」
「……言ってほしいですか?」
「そうだな、聞いてやってもいい」
「じゃあ、一番はキャスに取られちゃったので上で待ってます」
「しょうがねえ……今日は早く帰らなきゃなんねェな」
梯子を登りきるとき、ふと見えた船長が帽子の唾を軽く下げて微笑んでいた。 君の帰る場所を私は知っている
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