1 天秤「Joyeux Noel,Savant!」 賢「…………で、私にどうしろと言うのだね」 天秤「え、なんで? 別に普通にしてくれればいいよ?」 賢「……サンタクロースの格好なんてどうしたのだと聞いているのだよ」 天秤「僕が着たいって言ったら姫君が作ってくれたんだ」 賢「……全く、余り彼女達を疲れさせないでやりなさい。君の為に物語も探してくれているのだから」 天秤「……はい」 賢「はぁ……君は何がしたいのだね…」 天秤「え、僕はただ、サヴァンに――」 どんがらがっしゃーん ロ「――痛ぇっ! 痛ぇつってんだろ物投げんな!!」 盗賊「黙れその口塞ぐぞいい加減にしやがれ俺の金返せ馬鹿ローランサン!!」 賢「……何やら騒がしいね」 天秤「あ、盗賊さんとローランサン」 ロ「ちょ、お前等アイツ止めてくれ! 話聞こうとしやがらねぇんだ!」 賢「大体状況は呑めたが、……とりあえずイヴェール、落ち着きなさい」 盗賊「……あー、二人共、騒がしくして悪い。あんまり腹が立ったからさ」 天秤「あ、ローランサン! 『お揃いーね私達っ♪』」 ロ「ん? あ、『お揃いーね、嗚呼幸せー♪』」 盗賊「……サヴァン、俺さ、今もう一発アイツ殴りたい」 賢「とりあえず今は抑えなさい。サンタクロースが二人に増えたがね」 盗賊「……俺、折角のノエルだから地味に貯めてた金でちょっとは美味いワイン買おうと思ってたんだよ。そしたらアイツ、その金でサンタの衣装買いやがって……!」 賢「まぁそんなとこだろうと踏んでいたがね」 天秤・ロ「「『今はあーざやかーなスカーレット♪』」」 盗賊「オイ、ローランサン! くるくる回って歌ってないでその衣装早く返品してこい!」 ロ「いいじゃねーか、なんでお前は楽しもうって気持ちがねぇんだよ!」 盗賊「俺だって楽しみたかったよ、お前の所為でその計画は丸潰れだけどな!」 天秤「ローランサンも似てるね。僕もサヴァンに否定されちゃったし……」 ロ「いや、お前は間違ってねぇよ。寧ろ楽しもうとして当たり前だろ?」 天秤「そうだよね! よかった……ローランサンは認めてくれて…!」 盗賊「あーもういい面倒だ、俺は静かに楽しみたいんだ。勝手にしてろ」 賢「……で、私の隣に座るのかね」 盗賊「一番静かに落ち着けそうだから。ダブルサンタクロースは無視だ、無視。まだ歌ってやがる」 賢「そうか、私は陰ながら彼等を傍観しているがね」 盗賊「は?」 賢「イヴェールが楽しいと思えるならば、私はそれでいいのだよ。馬鹿らしいが、今の彼は至極楽しそうだ」 盗賊「なんか、大事にしてるんだな。何やかんやで」 賢「君だってそうであろう?」 盗賊「…何が」 賢「恐らく、君はワインを買って一人で楽しむつもりなど毛頭ない。彼と二人で飲むつもりだったのだろう?」 盗賊「……そうだけど、」 賢「ならば彼も同じように、歓楽を君と共に得たいと考えると思わないのかね?」 盗賊「……サンタの衣装をもう一個買ったとでも言いたいのか?」 賢「そこまで馬鹿ではないだろう、彼も」 盗賊「さぁ、どうだか。お前のほうも、あんまり色々履き違えないほうがいいと思うぞ」 賢「私に忠告などまだまだ早いよ、イヴェール」 5⇒冬天秤と賢者 6⇒盗賊 → |