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罪と情


※十二国記パロ
イヴェールが王、ロラサンが麒麟。知らない方ごめんなさいノリでお願いします…










 ――嗚呼、多分コイツだ。

 そう理解した時には、膝を折りイヴェールの足の甲に額付いていた。

「御前を離れず――」
「許す」

 言葉を遮られ、思わず拍子抜けした。

「オイ最後まで聞けよ! そんなに早く王になりたいか!?」
「ああ、なりたいさ」

 憤りを隠せず怒鳴ると、腹の立つ程落ち着いた声が返ってきた。王を選ぶ麒麟の言葉を遮る人間など俄かに信じ難いが、イヴェールはそんな破天荒な人物なのだ。額付いていたことが馬鹿らしくなり、立ち上がって睨み付ける。

「お前を、崇高な生き物である麒麟を跪かせられる唯一の地位だろう? 最高じゃないか、ローランサン」
「……くそっ」

 くつくつと喉で笑うイヴェールから視線を逸らした。ああ、コイツの所為で国は傾くだろうか。国を背負い、民を養う責任等微塵も感じていない。単に、麒麟である俺が従属することを愉しんでいるだけだ。そんな奴を王に選ぼうとしている自分も、あまりに滑稽だが。

「俺を王にさせてくれるんだろう?」
「……」

 もしかして、俺は間違えているのだろうか。

 そんな一抹の不安が脳裏を過ぎる。唯、イヴェールと離れたくない一心で王に選ぼうとしているんじゃないだろうか。王を選べばその人間に生涯仕えなければならないが、だからと言ってこんな強欲な人間を一国の王に据えていい筈がない。直感だけで選んでいいような生易しい選択ではない。まして、抱いた情だけで王を選ぶなど以っての外。それでも再び膝は折れ、イヴェールの足の甲に額付いていた。不安は新たな不安を呼び起こすだけ。瞑目し、震えた声音が言葉を紡ぎだす。

「…………御前を、離れず…」

 直感による妙な確信を持っていた初めとは異なり、意識はイヴェールを否定してしまう。駄目だ、確信なんてない。王気など、……天啓など、見えていないじゃないか。

「詔命に背かず、忠誠を誓うと……」

 それでも唇は止まらない。

「誓約します」

 引き返せない。静寂に響き渡る低い声が、頭上に注がれた。

「――許す」



 これでもう、離れられない。そしてこれは、自然の理全てに対する裏切り。ローランサンは大罪を犯した。





end.







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