眠れる森 ※イヴェサン ぼんやり。意識を水に浮かべるような感覚。夢路が儚く消えていく。人。街。樹。空。雲。太陽。全てが霧に包まれるように消えていく。 夢を見ていたんだな、と現実に戻りかける感覚の中で悟る。内容は瑣末事すぎて覚えていない。気怠い。目が覚めそうな時はいつもこうだ。まぁ、悪夢に魘れたり、金縛りにあったりしないだけ幾分もましだろう。 さぁ、折角夢見もよかったことだし、起きてからはのんびりと過ごそうか。ベッドからは暫く出ないだろうな。その後朝食と言う名の昼食を取ってから、愛用の黒い剣の手入れでもしよう。相方はどうせ本ばかり読んでいそうだから、自分はまた白日の下昼寝でもしてるだろう。ああ、それなら夢の続きも見れるかもしれない。既に忘れかけてるその物語をきっと思い出させてくれるにちがいない。流れるような一日。最高だろうな。 まぁ、まずは目を開くことが先決だろうな。何やかやと願望ばかり考えていても一日は始まらない。 そして、瞼を開いた。 一面に、何故か相方のオッドアイが垣間見えて。唇を塞がれて。離れてから、満面の笑みを浮かべられて。 「おはよう、眠り姫ちゃん。今日仕事あるの、もしかして忘れてたとか言わないよな?」 前言撤回。今日は最悪な一日だ。 end. |