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 屋根を打つ雨の音が聞こえた。窓を覆っていたカーテンを開けると、しとしとと控えめな音を立てながら、雨が降っていた。

 今年も雨か。帝人は重くなる気分を隠すようにカーテンを閉めた。

 七夕という日に、天気が良かった記憶はない。子供の頃はどうだったか忘れたが、少なくともここ数年晴天だったことはなかったはずだ。日本列島全土に雲がかかっている訳ではないのだから、何処かに行けば見えるのだろう。もし晴れていたとしても、ここは明るすぎる。きっと見ることはかなわない。

 カーテンの向こうで、雨音が激しくなった。その音を避けるように、窓に背を向ける。


――どうせ一人ぼっちなんだ。


 天の川が雲の上にあったとしても、この雨が関係ないとしても、それが昔々のお伽噺だったとしても。結局、一人ぼっちなのだ。

 自分と同じ、一人ぼっち。

 テスト勉強の続きをしようと机に向かって腰掛けた時、机の上にあった携帯が光った。――メールだ。

 帝人は、受信を告げる光が止まるまでじっと待っていた。大人しくなった携帯を手に取り、メールを開いた。

『天の川発見』というタイトルのメールに本文はなく、写真が一枚添付されていた。

 その写真に、思わず息を飲んだ。どこにでもありそうな川の水面に、街の照明が浮かんでいる。そこに落ちた雨粒が街の輪郭を掻き消し、川の流れに合わせてゆらゆらと光を反射させていた。空にある天の川が、雨と共に地に落ちてきたかのような、妙な錯覚を覚えた。

 何も言えず、暫く写真を見ていると、再びメールが来た。すぐに確認すれば、写真を送ってくれたその人からで。タイトル無題のメールには、たった一言「頑張れ」と書かれていた。

 彼らしいとゆるんだ頬を引き締めて、開きっぱなしの教科書とノートを引き寄せる。メールは閉じられることなく、帝人の傍らで天の川を映し出していた。

――空の上の2人にも、メールのような通信手段があればいいのに。

――そしたら、一人ぼっちも堪えられるから。



milky way of rainy day



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