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※アリスパロ
帝人+正臣+ろっちー+京平




 帝人はそのとき不思議な森の中で、たった1人で散歩をしていたけれど、歩くことにも疲れてきたし、何処かで一休みしようとしていたところでね。
 座れる場所がないかと辺りを見回してみたけれど、ちょうど良い石や切り株も見つからない。
 どうしようかと立ち往生していた、その時だ。
「帝人ー!」
 森の奥へと続く道の先から、派手な金色のウカレウサギがやって来た。その見た目といい、彼の性格といいウカレウサギにぴったりだけど、彼が嫌だと言うから帝人は名前を呼んだんだ。
「正臣!」
 帝人の姿を確認した正臣が、手を振りながら駆け寄って来る。
「こんなところで会うなんて偶然だな。お前、何してるんだ?」
「うん、ちょっと散歩をね。休憩しようと思ったんだけど座るとこがなくてさ、どうしようか迷ってたんだ」
 帝人が困ったように笑って言った。そしたら正臣は「ちょうど良かった」とにっこり笑い返してきたのさ。
「俺は今からお茶会に行くところなんだけど、行くとこないならお前も来いよ」
「お茶会…?」
 帝人は首を傾げて、正臣の顔をまじまじと見つめてね。「お茶をしませんか」なんて、ドラマみたいなセリフをよく口にする正臣だけど、お茶会なんて聞いたことがなかった。
「あぁ定期的にお茶会するんだよ」
「へー、そうなんだ」
「今日がそのお茶会の日なんだけどー、お前がどうしてもっていうなら連れて行ってやるぞ」
 正臣はオーバーなアクションをつけながら、帝人に告げた。
「行ってらっしゃい」
 帝人は、そんな正臣には慣れたものでね。素っ気ない言葉を、お手本のような笑顔で言ったんだ。
「…帝人ー!お前いつからそんな冷たい奴になったんだ。俺のハートがブロークンで大変なことになったらどうしてくれるんだ!」
「英語苦手なんだから、無理して使わなくていいよ」
 その後も正臣は帝人に一緒に行こうとお茶会に誘うのだけど、帝人は疲れた様子で断り続けていた。だってまるで小さな子供のように喚きたてるものだから、少し疲れてしまってね。
 こんなことなら早く家に帰ればよかった、と帝人は思ったんだ。どうやって正臣の誘いを断ろうか考えていた時、突然後から衝撃が来てね。
「…っ!?」
「なーにやってんだよ、こんなとこで」
「千景さん!」
 正臣が驚いたように呼んだ名前は、帽子屋のものだった。千景は帝人を背後から抱き締めるように覆い被さっていたのだけど、帝人はそれほど重いとは思わなかった(そんなことを言ってる場合じゃなかったんだけど、驚きのあまりそれしか考えられなかったのさ)。
「帝人をお茶会に連れて行こうかと思って誘ってたところなんですよ」
 正臣が、千景から帝人を引き離して言葉を続けた。千景は気にした様子も見せず、お気に入りの帽子を触りながら飄々と笑ってね。
「あぁお前なら大歓迎だ。女っ気がねぇのはいただけないが、人数多い方が楽しいしな」
 なんて言い出すもんだから、正臣は帝人の肩を抱いて「決まりだ! よーし行くぞー」と声をあげて歩き出してしまったのさ。
「…っ、僕は行くなんて言ってな…!」
「諦めて俺たちとお茶会しようぜ」
 我に返った帝人が首を振って否定するけれど、正臣は止まらないし、千景は帝人の腰に腕を回して逃げられないようにするんで、帝人は仕方なくお茶会に参加することにしたんだ。
 不思議な森の中を、ウカレウサギと帽子屋に挟まれて(それもどうしてだかすごい密着している)、帝人は会場まで歩いた。
 右隣の正臣へ淡々と言葉を返し、左隣の千景の言葉をあっさりかわしながら、「早く着かないかな、本当に疲れた」と帝人は心の中でため息をついてね。
 暫くすると少し先に大きなテーブルとたくさんの椅子が見えてきた。
「もう準備終わってんじゃねぇの?」
「あー、門田さんに悪いことしちゃいましたね」
 真っ白なテーブルクロスをかけた大きなテーブルの上には、クッキーやスコーン(焼き立てだろうかいい匂いがする)、ジャムやバターが入っているだろうビン、砂糖にミルクが並べられ、空のティーセットが椅子の前に置かれていてね。けれど、椅子やティーセットの種類がまちまちで立派なはずの会場は、なんだかとてもちぐはぐしてたんだ。
 準備がされていた長いテーブルの奥で、椅子に腰かけ机に突っ伏している影があった。ネムリネズミだ。
「門田さん!」
「……あ?やっと来たのかよお前ら」
「今からって時に寝てんなよな」
「うるせぇ、俺はお前らと違って昨日遅くまで仕事が…、って珍しいな。今日は女連れじゃねぇのか」
 ネムリネズミこと京平が、騒がしい2人の間にいる帝人に目を向けてね。帝人をその目に入れた途端、京平は何処か納得したようだ。
 眠そうではあるけれど、ちっとも眠ってやしない彼をどうしてネムリネズミと呼べるだろうか。帝人は思ったのさ。だから名前を呼んだんだ。
「門田さん、こんにちは」
「おう。…大変だったみたいだな」
「あはは…」
 疲れ顔した帝人に京平は苦笑を浮かべてね。
「お前は適当に座ってろ。…ほら、お茶の準備するぞ」
 京平が立ち上がり踵を返して奥へ向かうと、帝人にくっついていた2人が離れ京平についていくけれど。
「すぐに帰ってくるからな、帝人ー! 帰るなよ」
「分かったから早く行きなよ」
「寂しいかもしれねぇけど、ちょっと待ってろよハニー」
「寂しくないです。あとハニーじゃありません」
 やっぱり大人しくしている2人じゃなくってね。帝人は大きく息をついて、近くにあった椅子へ腰かけた。
 それから3人は代わる代わるポットを運んでは奥へ戻り、戻ってはポットを出してきて慣れた手付きで準備を進めていくんだ。それを見ていた帝人は、感心するやら不思議に思うやらでね。
 何を不思議に思ったかって? それはもちろん、4人でお茶をするのにどれだけポットが必要なのかってことさ。テーブルの上には大きさも色も形も様々なポットがたくさん置かれていたんだもの。そう思うのも当然だよね。
「これで終わりだな」
 京平がポットをテーブルに置いた。
「待たせたなハニー」
「帝人、今日のお茶は絶品だぞ! なんたって、この正臣様が淹れたんだからな」
「あー、はいはい。千景さん、ハニーは止めてください」
 正臣と千景が帝人の両隣の席へ、当たり前のように座ってね。準備を始める前のように、帝人にべったり寄り添った。
 京平は帝人の向かいの席に座り、ティーカップへとお茶を注ぐとカップから湯気が出てきたんだ。
「…り、緑茶ですか?」
「みたいだな」
「みたいだな、て…」
 洋風のポットから洋風のカップへ注がれた、純和風のお茶。帝人は不自然な組み合わせに驚いてね。けれど、当の京平は当然とばかりに平気な顔をしていた。
 京平はポットを置き、新しいポットを手にすると帝人のカップへ注ぐ。するとどうしてなのか、今度は紅茶が出てきてね。
「紅茶…?」
「あ、俺コーヒーだ」
「俺は紅茶。ハニーと一緒だな」
 正臣が渋い顔をしながら砂糖とミルクを引き寄せていた時に、千景が嬉しそうに笑った。
 帝人は何がなんだか分からなくなってね。どうやらポットの中身はそれぞれ種類が違うらしいと気付いたのは、「お前のはダージリンで、帝人のはアールグレイだ」と京平が言ってからだった。
「よし、じゃあ始めるか」
「め茶く茶会の始まりだ!」
「声を揃えてなハニー」
「え、えっ?」
 帝人は何が始まるのかと慌ててね、少しどぎまぎしたんだ。もちろんお茶会に決まっているんだけれど、声を揃えてなんて言われても皆目検討すらつかないからね。
 そんな帝人にお構いも無しに「せーの」と合図が送られた。



何でもない日万歳!

(飲めや歌えや、何でもありさ)





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