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※同い年、学パロ






 午後一の授業は眠くなるものだと思う。食欲が満たされれば次の欲へ傾くのが人間の性(さが)だ。だから欠伸をするくらいは許して欲しいと思うのは、自分のエゴだろうか。
 欠伸を零した京平は、何とはなしに教室を見渡した。
 真面目に授業を受けているのは数人で、内職をしている者や京平と同様に睡魔と戦っている者、中には気にせず机と仲良くしている者もいた。
 人のことを言えた義理ではないが、鼾をかく程熟睡するのはどうかと思う。先生も流石に注意するべきではないか。
 しかし、鼾は聞こえど教室は静かだ。誰も声を出さない。教鞭を執る先生ですら、必要最低限の音量だ。
 午後特有の気だるさは、話をすることも億劫にさせる、何か特別な力があるらしい。
 京平は、黒板に書き出される文字を、機械的にノートへ写していく。
 その時、ポケットに入れていた携帯が振動した。教室の前にある時計を確認する。
 こんな時間に送られてくるメールは、碌なもんじゃねぇだろうな。
 そうは思うが、開いて見るまでどんな内容かは分からないので、確認はする。
 先生が黒板に何か書いている時を狙って携帯を取り出した。
 新着メール1通。
 先生の背中を確認し、メールを開く。しかしメールの差出人で目が留まった。
 帝人から……?
 メールを送ってきたのは、同じクラスの友人だった。友人というには色々複雑なのだが、真面目な彼が授業中にメールを送るなんて京平には考えられず、内心首を捻るばかりだ。
 ちらと斜め前に座る帝人の横顔を盗み見たが、いつも通り真剣に授業を受けている。特に変わった様子はない。
 やはり意味が分からないが、メールを見れば何か分かるだろうか。そう思い、中断していた作業を再開した。
『さっきから欠伸ばっかりじゃないか。先生の話はちゃんと聞かなくちゃダメだよ!』
 内容は至ってシンプルだった。その文面が小さな子供に注意するのと少しも変わらないことに苦笑した。しかしどうして斜め後ろに座っている自分の様子が分かるのか。
『そういうお前も授業中にメールしてんだろうが。それにノートはとってるから大丈夫だ』
 素早くボタンを押して送信した。授業中にメールするのは初めてではないが、相手が帝人だったことはない。
 京平は、なんだか妙にくすぐったくなって携帯をポケットに押し込み、再び黒板を写し始めた。
 暫くして再び携帯が震えた。先ほどと同じように、むしろ2回目ということが京平の罪悪感を削ぎ落としたのか、動きが大胆になる。
 メールはやはり、帝人からだった。
『僕は普段から先生の話を真面目に聞いてるから大丈夫だよ。ノートとってても説明聞かなきゃ分からないでしょ』
『分かんねぇとこは、お前に聞くからいい』
『僕、教えるなんて言ってないけど』
『教えてくれんだろ?』
『まぁね。僕が教えないと、京平欠点ばっかりでしょ』
『おー、頼りにしてるぞ学級委員』
 こそこそと2人でメールを続けていると、いつの間にかチャイムが鳴った。あれほど眠たかった授業は終わったようで、先生が教室から出ていく。それと同時に一気に話し声が溢れ始めた。
 教科書とノートを机に押し込んで、次の授業は何だったかと考える。
「次は生物だよ」
 声に出していただろうかと一瞬疑問が浮かんだが、直ぐに頭の中で霧散していった。休み時間ごとの恒例なので今更驚く必要はなかったのだ。京平は声の主を見ることもなく、言われた通り生物の教科書とノートを引っ張り出す。
「珍しいな」
「んー、たまにはね」
 主語のない言葉も、帝人は正確に理解したようだ。顔を上げた京平が見たのは、悪戯に笑みを浮かべた帝人だった。
「初めてだからすごくドキドキしちゃったよ。案外見つからないんだね」
「背中に目がありゃ見つかってただろうけどな」
「それは先生じゃなくて妖怪だよ」
 2人で顔を見合わせて笑う。共犯者のような仲間意識が京平の胸に広がる。授業中のメール程度ならかわいいものだが、それでも2人で共有していることに変わりない。
「そういえば何で欠伸したって分かったんだよ」
「え? ヒミツ」
「別に隠すようなことじゃねぇだろ」
「別に話すようなことじゃないよ」
「……」
「……」
 最近、臨也に似てきたんじゃないかと心配になった。見せつけるように大きく溜息を吐いても、帝人はにこにこと笑っているだけだ。
 そんな京平を嘲笑うかのようにチャイムが鳴った。帝人が背を向けたので席に着くのをなんとなく見送っていたが、帝人は座らずに振り返った。
「またメールするね」
「? 別にいいけど」
 生物の先生が入ってきたせいで、小声になる。
「まだ話し足りないから」
「話してんだろ、今も」

「それでもまだ、全然足りないよ」

 声を出そうと口を開いたら、帝人は笑って「起立」と号令をかけた。タイミングを失えば口を閉じるしかなく、京平は大人しく号令に従う。礼もそこそこに着席して直ぐに携帯を取り出し、帝人にメールした。



俺もお前が足りない

(P.S.耳まで真っ赤な君が好きです)




* * * * *
リクエストは「門帝、シチュエーションフリー」でした。
同い年学パロが好きみたいです。友達以上恋人未満なのとか(笑)対等と見せ掛けて京平さんが大人で上手なのがいいと思うよ。
リクエストありがとうございました!


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