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※女体化注意










「好きです」
 突然の告白に静雄は狼狽えた。
 仕事の合間、缶コーヒーを片手に公園のベンチに座っていた時だ。
 目の前に現れたのは顔見知り程度の、女子高生だった。高校の後輩、セルティの友人、ダラーズのメンバー、竜ヶ峰帝人。静雄が少女について知りうる情報の全てだ。
 たまに顔を合わせては話をするくらいしか面識のない少女が、何故自分に告白などしているのだろうか。
 目の前にいる少女は、自分と比べあまりにも普通だ。きっと彼女なら学校で、バイト先で、あるいは友人の紹介で、似合いの彼氏をつくることだってできるはずなのに。それなのにどうして。どうして、自分なんだ。
 静雄が握っていた缶コーヒーは音もなく潰れていた。…空でよかった、漠然とそんなことを思う。
「し、静雄さん…?」
 黙ったままの静雄に帝人が恐る恐る声をかける。
 静雄は伏し目がちだった目を上げた。真っ直ぐにこちらを見つめる帝人の目とぶつかる。綺麗だ。
「…あー、」
 何か言わねばと開いた口から漏れるのは、意味を成さない音ばかり。そんな自分に静雄は苛立つ。
 真剣な瞳も、少し垂れた眉も、真っ赤な頬も、小刻みに震える唇も。帝人の何もかもが冗談ではないと静雄に訴えかける。だから、困るのだ。
 冗談だろ、と笑って誤魔化すことができない。ふざけるな、と怒り狂うこともできない。ありがとう、と受け止める術が自分にはない。ごめん、と謝る勇気も自分にはない。
 あぁだって、こんなにも苦しい。悲しさと愛しさと切なさと嬉しさが、胸とは言わず全身で、せめぎあっているのだから。
 静雄は再び俯いた。眉間に寄ったシワを、帝人に見られたくはなかった。
「静雄さん、僕は別に…」
 貴方を苦しめたいわけじゃない。そう告げる帝人の声があまりにも悲痛で。静雄は身体を硬直させた。
 傷つけたいんじゃない。悲しませたいんじゃない。しかし自分に関わったばっかりに彼女は傷つき悲しんでいる。
 どうしようもなくなって、静雄が口を開こうとしたその時。ぽたりと何かが落ちて、地面へと吸い込まれていった。続いてもう一粒。
 ハッと顔を上げた静雄の目の前には、声もあげずに涙を流す帝人がいた。涙をいっぱいに浮かべた目は、それでも静雄を真っ直ぐに見ている。静雄は立ち上がり帝人を抱き締めた。
「帝人…」
「し、ずおさ…ん」
「泣くなよ、帝人」
「…だっ、て」
 帝人は嗚咽を溢しながら涙を止めようとするが、止まる気配はなくぼろぼろと零れては静雄のシャツを濡らしていく。
「……だ」
「ふぇ……?」
「お前が、好きだ」
 帝人の涙が止まる。
「…う、そだ」
「嘘じゃねぇ」
「じゃ、なんで…」
「…悪かった」
 帝人の目から、再び涙が零れ出す。
「…俺はお前を傷つけない自信がねぇ」
「…っ」
「俺のせいで、お前を何かに巻き込んで傷つけるかもしれねぇ」
 静雄は泣きじゃくる帝人の頭をあやすように撫でながら言葉を紡いだ。
「…傷は、いつか治ります」
「あぁ」
「僕が危ない時は、っ、静雄さんが助けてくれます」
「…あぁ」
「僕は、静雄さんが好きなんです…!」
「ん、俺も帝人が大好きだ」
 泣きながら、声をつっかえさせながら、帝人ははっきりと静雄に言った。
 静雄は、華奢な身体を壊さないように注意して、抱き締める腕に力を入れる。
 逃げようとした自分を絡めとって離さなかった、その綺麗な瞳が曇ることのないように、彼女を守ろう。静雄はそっと胸に誓う。
「泣くなよ帝人」
「っ、無理です」
 零れる涙を指の腹で拭って苦笑した。



囚われた臆病者

(君の瞳が、僕を責めるから)



* * * * *
リクエストは「帝人女体化」でした。
女体化は初めてだったので、これで大丈夫なのかひどく不安なんですが。ど、どうでしょうか(汗)
つかシズちゃんが弱いよ。帝人泣かせるとかふざけんな、て思ったら書いてるの俺っていうねwww
リクエストありがとうございました!


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