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※学パロ


 昼休みは、他の休み時間よりも長い。弁当やビニール袋を引っさげて、好きな場所で昼食を摂る。試合間近の運動部や、発表会間近の文化部に所属している生徒たちは食事もそこそこに部室へと向かう。早弁はそんな彼らの見方だ。
 けれど、部活に入っていない帝人には関係ない。それは彼を挟むように座っている静雄と京平も同じだった。
 静かな屋上で3人は各々の昼食を広げていた。帝人は手作りの弁当を、静雄は食堂で買ったと思しき焼きそばパン、京平はコンビニで買ったおにぎりを。三者三様のご飯を食べながら談笑していた。
 何がきっかけだったか忘れてしまったが、帝人はこの昼休みの使い方を気に入っていた。3人横並びにフェンスへもたれかかり、青い空を見上げながら過ごす昼休みはひどく穏やかだ。
 平和だ。帝人は小さな欠伸をしながら思う。
 ガラの悪い上級生に挟まれて何を言うか。心のうちでそっと苦笑しながら隣に座る2人を盗み見る。
 金色に染められた髪が印象的な静雄と、黒い髪を後ろへ撫で付けている京平。今時の不良と正統派の不良といった感じだろうか。静雄は臨也と並んでこの学校では危険人物であるし、京平は不良たちのリーダー格だ。喧嘩も強い。静雄は桁違いだが。
 つまるところこの2人は一般的に不良と呼ばれる生徒なのだ。けれど帝人は、彼らが悪い人でないことは知っているし、優しくて頼りがいのある先輩だということを分かっている。そうでなければ、ごく普通の優等生タイプの帝人が2人と親交を持つことはなかっただろう。
「そうだ帝人」
「何ですか?門田さん」
 帝人は袖で目を擦りながら、京平を見た。
「この間映画観に行きたいって言ってたろ」
「はい」
 先日、最近映画を見ていないことを思い出した帝人が行きたいとこぼしたのだ。その時、今何か面白いものはやっていないかと、2人に尋ねた。しかし2人とも知らなかったようで、どんな映画が好きかという話になったのは記憶に新しい。
「俺も観たいのがあるんだが、一緒に行かないか?」
「え、いいんですか?」
 京平から誘いがかかるとは思ってなかったので帝人は驚いた。しかし映画を観に行ける嬉しさが勝り、キラキラと目が輝きだす。
 京平がこくりと頷き、帝人が嬉しそうに笑う。
「じゃあ今度の休みとか大丈夫か?」
 はい、と帝人が返事をしようとしたが、先に声を発したのは京平とは反対側に座っている静雄だった。
「帝人」
 名前を呼ぶのと同時に帝人に体を寄せ肩にもたれる静雄。
「静雄さん?」
 普段、人が話している時に入ってくるような人ではないだけにどうしかしたのかと不安になる。帝人は首をひねって静雄を見た。少し不機嫌そうだ。
「今度の休みは俺と買い物に行く約束だろ」
「あっ…、そうでした」
 帝人はしまったという顔をして静雄に謝る。分かればいい、と優しく微笑んだ静雄は帝人の頭を撫で元の位置へ戻った。帝人は京平へ視線を戻し、申し訳なさそうに笑う。
「すいません、門田さん。別の日にしてもらっても構いませんか?」
「気にすんな、と言いたいところだが、もう直ぐ上映終わるヤツでよ。今度の休みを逃したら映画館では観れねぇんだよな」
「えっ? どうしましょうか」
 帝人の頭を撫でながら困ったように笑う京平。帝人が悩み始める。
「つか、映画とか余裕持って誘えよ」
 2人のやり取りを聞いていた静雄が呆れたように呟く。しかし京平も負けてはいられない。
「…どうせお前も約束したの昨日の晩だろ」
「なっ、何で知ってんだよ」
 もしかして臨也が絡んでいるんじゃないだろうな。静雄はそんな疑いのこもった目で京平を睨み付けた。
「午前中機嫌良かったろ、お前。昨日まで普通だったのに。分かりやすいんだよ」
「うるせっ」
 普通なら静雄に睨まれただけで戦意を喪失するが、この展開を何度も経験している京平が怯むことはない。静雄は舌打ちとともに視線を反らした。
 何度も経験しているからこそ、この先どうなるかなんとなく予想がついてしまう2人だが、だからといって帝人とのデートがかかっているのだ。譲れるはずがなかった。
「俺は期限があんだから、今回は譲れよ」
「あ? 先に約束したのは俺だぞ。それに、俺だって近いうちに買わなくちゃいけねぇんだよ」
「お前、人のこと言えねぇだろそれじゃあ」
 帝人の頭の上で、交わされる会話は普段の静雄を知っている者からすると冷や冷やするような内容だが、帝人が気にしている様子はない。京平が静雄のキレない程度の会話が出来ることも、静雄が帝人を巻き込むような喧嘩をしないことも、彼は理解している。けれど1番大きな理由はやはり慣れかもしれない。
 そしてお決まりの台詞を発するのだ。
「じゃあ3人で行きましょう」
 帝人がにっこり笑いながら提案したことに、両隣の2人は肩を落とす。やっぱりこうなるのか。
「ダメ、ですか……?」
 見るからに気を落としている2人に帝人は首を傾げながら問う。身長のせいで自然と上目遣いになる帝人が悲しそうな顔をすれば、2人はノーとは言えない。慌てて笑顔を作り、その場を取り繕う。
「そ、そんなことねぇよ」
「3人だと、楽しいもんな?」
「……本当に?」
「俺たち帝人に嘘ついたことあったか?」
 京平の問いに帝人は首を横に振る。
「…だから、変な心配すんなって」
 続けて静雄が帝人の頭をぽんぽんと撫でる。
 帝人はこくりと頷き笑った。
「楽しみですね!」
「あぁ」
「そうだな」
 こうして今度の休日は3人で映画を観た後に買い物へ行くことになったのだった。
 来良学園のいつもと変わらない、日常の一コマ。



いつもの昼休み

(来週も、再来週も、その次も)



* * * * *
リクは学パロ、静帝門で帝人を取り合いでした。
えーと、兄貴サンド?(←)何サンドになるんでしょうか?男前にしたいけど、静雄とセルティで男前コンビですもんねぇ。何か共通項はないものか。
こんな感じで良かったでしょうか?(汗)楽しかったんですけど、この2人が取り合いしてる図があまり思い浮かばなかったです。多分戦争コンビみたいに暴れまわったり強引だったりがない、若干のヘタレコンビだったせいもあります←
2人が親友ポジションとかで、お互いに牽制しながらくだらない口喧嘩してる図が一番可愛かったので。子供だし馬鹿っぽくてもいいかと思ったのは内緒。帝人は天然でも分かっててもどっちでも可愛いと思います。だって帝人ですから(笑)
ありがとうございました!!


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