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「好きだ」
 帝人はものすごく困惑した。
 目の前にいるのは、池袋最強と名高い自動喧嘩人形こと平和島静雄その人だ。ふわふわしていそうな金髪に色つきサングラス、そしてバーテン服がそのすらりとした長身を覆っている。
 名前からも分かるように、彼は男だ。それも帝人よりはるかに体格が良い。容姿もいいが、それ以上に喧嘩が強い。池袋に生きる者のほとんどが静雄を恐怖の象徴のように思っている。
 そんな静雄が帝人に告白している。耳まで真っ赤にして。
 なんか可愛いなぁと思いながら、やはり帝人は戸惑い続ける。
 これは、その、俗に言う愛の告白でいいんだろうか。お付き合いしてください、とかそういう類の。
 考えるだけで恥ずかしい。帝人はほんのり頬を染めながら、それでも素直に喜ぶことができなかった。
 別に帝人は静雄が嫌いではないのだ。むしろ好きだし、告白は嬉しい。非日常として憧れていた時とは別に、静雄に淡い恋心を抱いていたのだ。今日でなければ手放しに喜べたのにと目の前の静雄を恨めしく思う帝人だった。
「……それ、本当ですか?」
「あぁ」
 薄い青に侵されても、静雄の目は真剣だ。
「あの静雄さん。今日が何の日か、知ってますか?」
「あ? 今日?」
「今日です」
 突然の質問に少し不機嫌に声を低めた静雄は怖いが、怯んではいられない。帝人の気迫に押される形で静雄は考え始める。
「あー、3月の……」
 帝人ががくりと肩を下げた。帝人の変化に静雄は驚きを隠せない。
「おい、帝人…?」
 そんなことだと思ったと言うと、静雄に対して失礼だろうか。帝人は呆れ半分、嬉しさ半分で力が抜けてしまった。
 わざわざ年中行事に乗っかるような性格ではないし、意味のない嘘をつくような人でもない。むしろ彼の性格からすると嘘は嫌いなタイプだ。
 しかし帝人がそんなことを考えているとは露とも知らない静雄は、おろおろと慌て始める。
 やはり嫌われてしまったのだろうか。気持ち悪いと思われたかもしれない。静雄はぎゅっと手を握った。
「…静雄さん、今日は4月ですよ」
「え?」
「エイプリルフールです。…だから、僕嘘かドッキリなんじゃないかと思いました」
 帝人はふにゃりと力なく笑みを浮かべ静雄を見上げると、彼はぽかんと口を開いていた。そして慌て始め、携帯で日付を確認する。
「…あーー」
 今日が4月1日であること、それが何を意味するかを理解した途端、その場にしゃがみこみ頭を抱える。わしゃわしゃと自分の頭を掻き回す静雄に、今度は帝人が驚いた。
「し、静雄さん…!?」
「…すっげーだせぇ」
 ため息と共に吐き出された言葉は重く、静雄自身にのし掛かる。けれど心配そうに静雄を見やる帝人を視界に入れれば少し頬が緩んだ。
 静雄が立ち上がり、帝人は安堵する。その表情は未だに心配そうに歪められていたが。
 静雄が深く息を吸った。
「…嘘じゃないからな」
「はい」
「本当に好きなんだ」
「はい」
 一通り言い終えると、詰めていた息を抜く。嘘ではないことを分かってもらえれば静雄は満足だった。
 だから帝人から返事があることを失念していた。
「僕も静雄さんが好きです」
「…あ?」
「嘘じゃありません」
 帝人が頬を蒸気させながら言う。静雄が声を出そうと口を開くと、すかさず嘘じゃないと帝人が言い募った。
 つまり、両思いということでいいのだろうか。これは。
 お互いに顔を赤く染めながらそわそわと落ち着かない中、静雄は頭の中を整理することで落ち着きを取り戻そうとしていた。その甲斐あってか、顔が赤い以外は普段通りだ。
 暫くすると帝人も落ち着いたのか、顔は赤いままだったがしっかりと静雄を見ている。
 何か言わなければ。静雄に妙な圧力がかかるが、何を言えばいいのか分からない。
「…よろしく」
「はい!」
 静雄は頬を掻きながら、ぶっきらぼうに声を出す。帝人が笑顔で答えた。



三月ウサギの告白

(三月ウサギは4月になったことに気付いてないみたいです。)




なんか色々間違った。
気付いたら帝人から静雄に視点が移ってるっていう。どうしてくれようw
何で三月ウサギかっていうと、三月って発情期らしくって。発情中→恋愛→告白という短絡的な考えが原因です。ごめんなさい。


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