「『恋に落ちる』と初めて表現した人は、とっても感受性の強くてとっても表現力が豊かで、それでいてひどくネガティブな人間だ。 誰かに恋する瞬間のあの衝撃を、落ちると表現するなんて。
あぁ、だって地に足をつけて生きる人間が落ちることは、ごく普通の日常において、ありそうでないことだ。
落ちる感覚を知り、尚且つその不安定さに恋を重ねたのだろう。
けれど、落ちるなんてひどくネガティブだ。始まった瞬間に、マイナスからのスタート。
そのまま穴を落ち続けるのか、這い上がって進むのか、はたまた穴を掘って進むのか。それは人によって様々だけど。
でも落ちるという表現に大多数の人間が賛同したから、今も尚恋に落ちるなんて言われ続けてるんだろうね」
聞いてもいないことをペラペラとよく話す奴だ。いつものことながらいけすかねぇ。
「……で、手前は何が言いたいんだ?」
「うん、だからさ。その他大勢に当てはまらない俺たちは、『恋に落ちる』必要性は全くないんだよ」
「手前と俺との間に、恋だの愛だのは関係ねぇだろうが」
「愛か。うん、シズちゃんもたまにはいいこと言うね」
俺の言い分にさもおかしいとばかりに肩を震わせた臨也に血管が切れそうになる。握った標識がみしりと音を立てた。
「愛っていうのはね、存在の証明だと思うんだ。いや、確認かな。
誰かを愛することで心の確認をし、誰かに愛されることで自らの証明をする。
大嫌いだと言うことで心を確認して、君に死ねと言われることで俺の存在を証明する。逆もまた然り。
ならさぁ、これは愛し合ってることになると思わない?ねぇ、シズちゃん」
「生憎とよぉ、俺が好きなのも愛してるのもアイツだけなんだよ」
「うん、知ってるよ。でも俺も帝人くんが好きだから」
今日の俺はよく堪えた方だ。だから、もういいよな?
「アイツは俺のだ。だから死ね」
「アハハ、死ぬのはシズちゃんだよ」
いつものように奴を追い掛ける。ナイフを避けて、標識を飛ばして。そして奴が言うところの愛を叫ぶ。
「手前はとっとと死ね!」
その呼び方もやめろ!
結局帝人が出てこないっていう。それでも静帝←臨です(笑)
この2人は喧嘩という名の殺し合いをしてればいいと思う。帝人を取り合ってればそれでいいと思う(真剣)