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「こんばんは、門田さん」
 帝人の挨拶は決まってこれだ。時間や状況により前の言葉は変わるが、必ず名前をつけて言う。そこに何か意味があるのか、京平には分からない。
「帝人か。今日は1人か?」
「はい、ちょっと買い物に」
 帝人が手にしている白いビニール袋からうっすらとオレンジが透けて見えた。ニンジンか。どうやら中身は晩御飯の材料のようだ。服は制服のままだから、学校帰りなのだろう。
 帝人が1人でいるのは、珍しい気がする。いつも同級生の紀田や園原といるし、臨也やセルティ、静雄とも交流があるようで一緒にいるところを多々見掛けられていた。
 この気弱そうな少年は、見た目にそぐわず社交的なようだ。京平がそれを知ったのだって、彼が人懐っこい笑顔を浮かべて自分に話し掛けてくるからだ。
 京平が頭の片隅で考えていること等知りもしない帝人は周りを見渡して言う。
「門田さんも珍しく今日は1人なんですね」
「あぁ、アイツらはそれぞれ忙しいみたいだからな」
 京平は苦笑した。
 言われて気付いた。京平も今日は自分1人だったということに。
 珍しく、という言葉にどれほどの意味があるだろう。考えたって仕方ない。それを発した人物は、軽い気持ちで言ったに違いないのだから。
 確かに、自分たちも端から見ればいつも一緒にいるようなイメージがあるのだろう。京平はいつものメンバーを思い出す。しかし、彼らとて四六時中一緒にある訳ではない。渡草は聖辺ルリのことになると見境がないし、残る2人も自分たちの趣味に生きている。京平はメンバー内で唯一仕事らしい仕事をしていて、拘束時間は他と比べると長い。
 つまりは、京平が帝人に持っているイメージは、帝人が京平に持っているイメージと同じだったということなのだろう。
「あ、じゃあ今晩家に食べに来ませんか?」
「は?」
 帝人の申し出に目を丸くする京平。
「今日はシチューにしようと思ってるんですけど、1人じゃ多いから」
 あ、嫌ならいいんですけど…、と消えていく言葉と共に帝人の頭も下がって行く。
「1人で飯を食うのは味気ないと思ってたとこだ」
「……それじゃあ」
「あぁ、ご馳走になる」
 京平の言葉に安堵したのか、帝人は顔をあげ嬉しそうに笑った。
「じゃあ、一緒に帰りましょうか」
「あ、その荷物持たせろ」
 歩き出した帝人の隣に並んだ京平は、白いビニール袋を奪い取る。
「えぇ?! いいですよ、これくらい平気ですから」
「飯、食わせてもらうのに、何もしないわけにはいかないだろう」
 驚いた帝人が取り返そうと手を伸ばしたが、逆にその手を取られてしまった。
 京平は帝人の手を取ったまま、池袋を歩く。帝人は顔を赤く染め、手を引かれるがままに歩き続けた。



ホントに珍しい

(ズルい、何も言えなくなる)



どうしてこうなった。
書こうと思ってたのと、違う話になってしまったのは、私のせいじゃないと思います。この子たちが一緒にご飯食べたいっていうから!←
書きたいヤツはまた今度リベンジします。


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