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 静雄の膝の上、向かい合わせに座った帝人から甘い匂いがした。
「ふふ、くすぐったいですよ。静雄さん」
 自分の首筋に頭を埋めた静雄の毛先がくすぐったいらしく、小さく体をよじる帝人。
 静雄は姿勢を変えずに答える。
「んー、悪ぃ」
「悪いなんて思ってないくせに」
 言いながら普段自分の目の前にあるはずのない金髪へと手を伸ばしさらさらと撫でる。
「帝人が可愛いのが悪い」
「何ですか、それ」
 静雄の言動を咎めるような言葉を呟く顔は、ふわりと笑っている。
 それには答えず帝人の腰に回した腕に力を入れた。

 静雄の家に帝人が泊まるようになったのは、付き合い始めてからどれ程経ってからだったろうか。
 お泊まりだって初めてではない。
 しかしこの2人は、中学生も驚く程にプラトニックな恋愛をしている。
 キスはしているようだがその先は全くと言っていい程進展がない。
 だからこそ、これ程べったりとくっついたまま楽しそうに笑っているのかもしれないが。

 けれども。
 帝人の甘い匂いを感じる度に、その柔らかな肢体を抱き寄せる度に、静雄は胸の奥で疼くものを感じていた。
 しかしそれをぐっと堪える。
 一度我慢を止めてしまえば、帝人が泣こうが喚こうが自分を止められる自信がない。
 力の使い方を覚えたとはいえ、我を忘れる状況に置かれれば力加減が出来るかどうか不安も残る。
 帝人を大切にしたい静雄にとってそれはあまりにもリスクの伴う行為だ。
 今はまだ、これでいい。
 静雄は自分に言い聞かせるように胸の内で呟いた。
「静雄さん……」
 静雄の髪を撫でていた帝人の手が止まり、名を呼ばれる。
「ん?どした?」
 手が頭から離れたことを確認し、顔をあげる。そこには目をとろんとさせた帝人の顔があった。
 瞬間、心臓が跳ねる。
「僕、もう眠いです」
「あ……?」
 帝人の声は徐々に小さくなり、静雄は聞き取れない。
「……ごめ、なさ」
 帝人は静雄に伝えようと必死に口を動かすが、言い終わる前に寝息とすりかわってしまった。
「み、帝人?」
 かくりと首を垂れ静雄へ凭れかかった帝人に声をかけるが、完全に寝てしまったようで身動ぎ1つしない。
 人肌の温もりが眠気を誘ったのだろうか。それもあるだろう。けれど、帝人は人前で簡単に寝るタイプではないと思っていた静雄は驚いた。
 神経質だからというより、一緒にいる人間が起きているなら、自分も起きていて相手をしようというタイプだろう。
 過去のお泊まりの時だって、静雄が寝ようと言うまで一緒に起きて話していた。それこそ今よりもっと遅い時間まで。
 それでも寝てしまうということは、よっぽど疲れているのか、静雄に安心しているのか。
「まぁ嬉しいんだけどよ」
 肩を上下させて眠る帝人を起こさないよう小声で。そして苦笑する。
 これはある意味生殺しだ。
 深く息を吸って、吐いた。
「……俺も寝るか」
 そっと帝人を抱き上げベッドへ移動する。帝人を寝かせ隣に滑り込んだ。
 向かい合うように抱き締め、近くにある帝人の額へキスをする。
「おやすみ、帝人」



狼になりたい、なれない

(へたれだって構わないさ)




今回はわりと甘めでしたね。この2人は基本的にほのぼのっていうか、可愛い感じが似合い過ぎて今更ですが(笑)裏の香りを漂わせつつ、プラトニックを掲げる私が一番へたれです←


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