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 静雄にとって休日は、惰眠をむさぼるためにある。
 取り立てという仕事の都合上、夜でないと捕まえられない相手にはやはり夜に出向かなければならず、日によって仕事の終わる時間が違う。
 そのため不規則な生活を送っている静雄は、眠れる時に眠れるだけ眠ることにしているのだ。
 だから休日は寝て過ごすことが多いし、外に出たとしても嫌なことがあれば暴れることは目に見えている。そんなわけで、暴力を嫌う静雄は家に籠ることが多い。多いというだけでゼロではないが。
 寝れるだけ寝て、腹が減ったら適当に食べて、そしてまた寝るという不摂生かつ怠惰な休日は、今日という日には訪れなかった。
 帝人が静雄の家に来るからだ。
 帝人が静雄の家に来るのは今日が初めてではないが、恋人が来ると分かっていれば掃除なり何なりとすることがある。
 静雄は珍しく朝に起きて身なりを整えてから朝食をとり、簡単な掃除をした。
「ま、こんなもんか」
 元々必要最低限のものしかない、寝るためにあるような部屋だ。掃除もすぐに片付いてしまう。
 やることのなくなった静雄は、テレビをつけ暇を潰すことにした。
「昼飯、どうすっかな……」
 カップラーメンがあっただろうかとあまり使わない台所を思い出すがよく分からない。
「……食えりゃ何でもいいか」

 まるで主婦のような午前中を送った静雄の元へ帝人がやって来たのは、昼を過ぎた頃だ。
 昼飯を食べ終えよく分からないバラエティー番組を流しながら、うとうととし始めた時だった。
 ピンポーン、という幾分間の抜けたが音が、静雄の眠気を飛ばす。
 時計を見れば約束の時間。
 大きな欠伸をしながら立ち上がり、更に伸びをしながら扉の向こうで待っているだろう帝人の元へ急いだ。
「…あ、こんにちは!」
「おう、まぁ上がれ」
 突然開いた扉に驚いたのか帝人が後退り、一拍遅れて挨拶をする。
 それを見た静雄は、次からは開ける前に声を掛けた方がいいかもしれないと、当たり前のことを今更ながらに考えていた。
 そして扉を最大限に開き、帝人が通るスペースを作る。静雄の横を通り抜けたことを確認すると扉を閉め、念のためにと施錠した。
 静雄の家にまで来るとは考えにくいが、折原臨也という人間が何を考えているのか分かったものではない。
 静雄たちの邪魔をするためだけに現れたって、不思議と納得がいく。
 すでに過去何度かデートの邪魔をされている身としては用心するにこしたことはないだろう。

 殺風景ともとれる静雄の部屋で、何をするでもなく2人で時間を過ごす。
 他愛もない話をしては抱きつき、とりとめのない話をしては頭を撫で、目と目が合えばはにかむように微笑み合う。
 後ろから腹に腕を回し帝人を抱き締めれば、静雄の腕に帝人の手が重なる。そして互いの温もりを確かめ合う。
 そんな在り来たりな幸せが、けれど静雄を知る人なら誰も想像しないであろうこの光景が延々と続く。そう、延々と。
 延々と続くかと思われたそれは、胡座の上に帝人を乗せた静雄の腹が鳴るまで続いた。
「お腹空きましたね」
 盛大に鳴った腹の音がおかしくてクスクス笑いながら、静雄を仰ぎ見る。
 その視線の先で静雄は少し恥ずかしそうに身動いだ。
「……もう夕方だしな」
「それじゃあ僕、夕飯作りますよ。今日はカレーです!」
 恥ずかしさから逃れようと視線を流すと、部屋の窓から夕日が差していることに気付く。帝人が部屋に来た時より部屋が薄暗いことにも気付いた。
 にっこりと静雄に向かって笑う帝人を見下ろす。
 まだ、離したくねぇ。
「静雄さん?」
 自分を見たまま反応のないことを不思議に思い、後ろにいる静雄と目を合わせようと帝人は上体と首を捻ろうとする。
 けれど、静雄は腕に力を入れ体を密着させることで帝人の動きを止めた。
「俺は多分、腹が減るのと同じようにお前に飢えてんだ」
 静雄は近くなった帝人の耳元へ、より一層口を近づける。
 幾分低くなった声が、直接耳へと響いてそのセリフと共に帝人の顔を赤くした。
「分かったら黙って俺に食われとけ」
 だめ押しとばかりに呟いた直後、赤く染まった耳を噛む。
 帝人の肩が跳ね、声を殺したことに気付いて静雄は喉で笑った。
「……喘ぎ声なら歓迎するけど」
 ニヤリと歪んだ口元が帝人に見えることはない。
 静雄は帝人を抱えたまま器用に立ち上がり移動を始めた。



はなすことを放棄した

(話せないから離せない)
(否、離せないから話せないのか)






あれ、肉食系どこ行った?←
もう何か色々すいませんでした。ホントすいません。前半帝人いないのにだらだら長いわ、後半は集中力が切れてぐだぐだだわ。やってらんないすね。
ただ、不摂生なシズちゃんが書きたかったの。通い妻な帝人が書きたかったの。それだけなんです。


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