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 煙草を始めたのはいつだったか。誰と、何を目的に、どの銘柄を。
 そんなことはいちいち覚えてない。
 少しでも早く大人になりたかったんだと思う。少し、背伸びしてみたかったんだと思う。
 多分、そんなありきたりな理由で誰かに勧められるがままに、煙草に手を伸ばした。
 それが今じゃ、習慣になった。ただそれだけのことだ。
 酒やその他の嗜好品となんら変わりない。惰性にも似た通過儀礼。
 けれど習慣と化した喫煙は、今の俺に安定剤としての効果をそれなりに提供している。
 つまり、社会への反抗やら大人ぶってみたかったやらで始めた煙草は、せっせと俺の体にニコチンを運び、その依存性を高めたのだ。
 大体、アセチルコリンに構造が似てるだの何だのと、ナス科の植物のくせして面倒だ。そんな意味分かんねぇことにまんまとはまった俺はなんなんだ、ちくしょう。
 とにかく、俺にとって煙草はなくてはならないものだ。精神安定剤であることも認めるし、健康に悪いことを承知の上で始めただけに止めよう等と思ったこともない。

 そこまで考えて静雄はポケットにしまってある煙草のケースを取り出し、何の躊躇もなくポイと道端に捨ててしまった。
 突然のことに驚いた帝人が落ちた煙草と静雄に何度も視線を動かしている。
「え、静雄さん…?いきなりどうしたんですか?」
「禁煙、しようかと思ってよ」
 やっとのことで行動な真意を尋ねた帝人に、静雄の返事はあまりにも予想外だった。
「何で急に!?」
 驚きのあまり目を丸くして声をあげる帝人に、静雄も面喰らったように肩を跳ねさせる。
 確かに四六時中、煙草をくわえているような静雄がいきなり禁煙などとは誰も思わない。今だって煙草をふかしている静雄が、だ。その説得力の無さといったら、類を見ない。
「まぁちょっとな」
 どうしてと問われれば、先程自らが吐き出した煙にむせた帝人を思い出した静雄だが。
 帝人の質問には答えず煙を深く吸って、肺から全身へと回る疑似的な感覚を堪能する。そして帝人の反対側へ吐き出した。
「最後の一本だ、付き合え」
 未だに不思議そうな表情で静雄を見つめる帝人に笑いかけた。



煙草を止める理由

(俺が原因でお前の一部が汚れるなら、一生自分が許せないと思うから)


「……煙草を吸ってる静雄さん、かっこよかったのに」
「!(……早まったか?)」





煙草ネタです。ありがちで申し訳ないすけど。衝動的で、だけど理由を隠したい静雄さんが書きたかったので。でも禁煙はきっと失敗するんだろうなぁ(笑)


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