共有する体温

冬に皿洗いをする度、何の罰ゲームか、とネロは思う。
手が冷たい。冷たい通り越して痛い。左手が真っ赤になっている。
ちらりと事務所を見やると、店主が相変わらずの机に長い脚を投げ出した行儀の悪いポーズで座って鳴らない電話の電話番をしている。ちょっとくらい手伝えよ、と思うのも言うのも全く無駄であるのは既に実証済みである。

ネロはため息を吐き、最後の一枚の皿を棚にしまった。
そしてキッチンから出て、年季の入ったジュークボックスからロックの流れ続ける事務所へと移動。このぐうたら店主に、ひとつ報復してやろう。
ネロはほくそ笑み、歳の離れた恋人の背後に立つと、真っ赤な左手を彼の頬にぴとりと押し当てた。

「──っぉあ!?」

椅子からひっくり返る勢いで驚くその様が、普段の余裕たっぷりな感じからはかけ離れていて、ネロはくすくす笑った。

「冷てぇな…」

「仕方ないだろ、水触ってたんだから」

笑われたのが不服なのか、ふて腐れたような顔で振り返ったダンテは、しかしネロの手を握った。一回り大きな、皮の硬くなった手は温かく、身体全体もあったかいのかな、とネロはぼんやり思って、後ろからダンテに抱きついた。

「…お?どうした」

「あったけ」

珍しい出来事にダンテは驚くが、嬉しさの方が勝り、身体を反転させるとネロを抱きかかえて膝に乗せた。今度は、ダンテが背後からネロを抱き締める形だ。

「こっちの方がいいだろ?」

「…まあ、さっきよりはいいかな」

ほんのり頬を赤くして、俯く。ダンテはニヤリとして同様に赤い耳たぶを軽く噛んだ。

「わっ!?」

「ふふん、お返しだ」

そう言いながらうなじに顔を埋めるダンテに身を竦め、腰に回された手に自分の手を重ねた。

「冷てぇっ」

「ったく…あんたが手伝わないから、冷たくなったんだぞ」

赤い顔で、不服そうに上目でダンテを見た。

「…責任とって、あっためろよ」

ダンテは口の端を吊り上げた。それはもう、嬉しそうに。

「勿論、マイハニー」

振り向いた姿勢のままのネロの唇に、自分の唇を重ねる。
熱い。熱くて、唇から溶けそうだ、とネロは思った。引き寄せられて更に密着する身体も温かい。何でこんなに?

「(──こども体温、とか)」

考えて、まさかな、とネロはこっそり笑った。中身は確かに子供じみているが、身体はどう考えてもおっさんだ。

「何、考えてんだ?」

繰り返されるキスの合間に、ダンテは囁いた。そう言えば、気づいた時には、思考はこの男に埋め尽くされてしまっている。

「…どうせ、あんたのことだよ」

向かい合うように向きを変え、拗ねたような表情とは裏腹に、甘えるように擦り寄って来るネロの唇にまたひとつ口付けを落として、ダンテは満足げに笑った。

「まあ、当然だな」

「じゃあ、ダンテはどうなんだよ」

「ネロの事以外、考えられると思うか?」

肩を竦めながら言うダンテの頬にキスをして、広い胸板に頬擦りした。小さな身体はダンテの腕にすっぽり収まる。
どうしてもここは、ダンテの腕の中は、安心しきってしまう。強がる棘が溶かされてしまう。
そんなネロの思考を読んだように、ダンテは言った。

「お前は、少し甘えん坊なくらいで丁度いい」

「…あっ、そ」

じゃあ、今だけ甘えてやる。
体裁も意地も、この逞しい腕の中ではどうでも良くなってしまうのだから。

「…今だけ、な」

少しかさついた薄い唇に、自分の柔らかな唇を重ね、ネロは急に恥ずかしさがぶり返してそっぽを向いた。

「今日は積極的だな、ハニー?」

「わ、悪かったな」

「いやいや、嬉しいサプライズだ」

微かに甘い匂いのするネロの銀髪に顔を埋め、それからまたキスを贈った。
厳しい寒さに、少しばかり感謝しながら。



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と言う訳で、600キリリクの「いちゃいちゃラブラブなほのぼのDN♀」でした。バカップルなイメージでしたがどうですかね(・ω・`)

おまえら何回ちゅっちゅすんだよ!

では、600ヒット&リクエストありがとうございました。
しないとは思いますが、リクエストしたご本人様以外のお持ち帰りはご遠慮下さい。

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