「Devil May Cry」
いつものように事務所机に脚を上げいつものように電話を取る。
電話を寄越したのは少女のようだった。
『あ…えーと、…あの』
珍しい客か?とダンテが首を傾げる。少女はなかなか用件を話せずにいる。
「どうした、俺に告白でもするのかい?」
痺れを切らしたダンテが皮肉混じりに言うと、電話口の少女は焦ったような声を上げた。
『ち、違っ!…ええとあの、あの…』
次の言葉に、ダンテは眉を潜めた。
『…願いを、叶える悪魔って…知ってる?』
「願いを叶える悪魔…?」
ダンテは穏やかでない表情で、脚を組み換えた。
「それを知って、どうするつもりだ」
電話越しのダンテの声があまりに冷ややかで、ネロは思わず身を竦めた。受話器を両手で握り、言葉を探す。
「いや、どうするって…」
『そいつに願いを叶えてもらうってか?…馬鹿げた真似はするな』
まずい。ネロは思った。
何がまずいって、尋ね方がまず良くなかった。完全に、悪魔を利用して願いを叶えてもらおうとしてる浅慮な小娘、としか思われていない。だからといって、正体を明かす訳にもいかない。
「いや、違くて…」
『用はそんだけか?じゃあ──』
まずい。ダンテが電話を切ろうとしている。ネロは焦って声を荒げた。
「ちょ、おい!待てよ!この××××野郎!」
言ってからネロは軽く後悔した。今は認めたくなくても女なのだ。口が悪すぎたかもしれない。
やべえ、と思った時には電話口のダンテが無言になっていた。
「………あの、ダンテ?」
『…随分刺激的な口の利き方するお嬢ちゃんだ』
「ご、ごめん……」
『まるで坊やと喋ってるみたいだな』
「────、」
ネロは背筋が凍るような感覚に襲われた。同時に、覚えていてくれたんだ、と言う小さな喜びを感じたのは今は置いておく。
「…な、何言って、る、の?俺…いや、あの、違…」
しどろもどろになるネロ。最早自分で何を言っているのかも分からない。辛うじて女っぽいしゃべり方を意識しようとは思っているが、かえって不自然である事に不幸ながら気付いていない。
『おいおい、何を焦ってんだ?お嬢ちゃん…俺はただ、男みたいだと思っただけだぜ?何の事だと思ったんだ?』
ネロは更にパニックになった。
口をぱくぱくさせるも、言葉が全く出て来ない。
それを見透かしたように、電話口のダンテの声がした。
『で。…何だってンな可愛い声になっちまったんだ?坊や』
完敗だ。
ネロはうなだれて、短く溜め息を吐いた。
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