「もしもし、…あら、ネロ!久し振りね、元気だった?」

電話口から聞こえる、聞き慣れたものより幾分高いネロの声。
後ろから聞こえる聞いた事のある男性の声と、やめろよ今電話してんだから!とネロが非難する声が聞こえる。
ふたりの関係を如実に物語るようなじゃれあいに、キリエは顔を綻ばせた。

「うふふ、元気そうでよかったわ。ダンテさんと仲良くやってる?」

仲良く、の部分を含みを込めて言うと、ネロの声がひっくり返った。キリエはくすくす笑う。

「…うん、分かったわ。身体に気を付けるのよ?」

やはり暫くフォルトゥナには戻れない、との事だ。
男には戻れなかったが、それでも幸せそうなネロの様子に、キリエは胸を撫で下ろす。

「ねえ、ネロ?」

悪戯心半分、願い半分でネロに話しかける。

「今度フォルトゥナに帰って来る時は、三人で来てね?」

電話の向こうで、ネロが間抜けな声を上げる。

「勿論、あなたとダンテさんの子供よ」

声からネロの動揺ぶりが手に取るように分かった。キリエはひとしきり笑うと、柔らかい笑顔でネロに語りかけた。

「…ねぇ、ネロ」

これは、紛れもないキリエの願い。

「女の人にはね、そうやっていつか素敵な宝物が出来るのよ。だから、嫌いにならないで。ね?」

そしてどうか、愛してほしい。

過去も現在もこれからの未来も、全部含めて、私の、彼の、愛するネロなのだから。

「じゃあまたね、お姫様」

ダンテをイメージして、茶化したようにキリエが言うと、ネロの声が響いた。


お姫様なんか死んでもごめんだ!



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