5

若の部屋に着いた四人は、心の中で髭に合掌しつつドアを開けた。

「…おぅ」

「うわぁ」

「……」

ごちゃごちゃしている。

髭の部屋はゴミも服もそのまま放置しているから汚かったが、若の部屋は広さに対して物が多すぎるのだ。
大半は魔具であり、ヌンチャクやギター、更に何に使うのかもよく分からない謎の魔具まで床や壁や至るところに埃を被ってとっ散らかっていた。魔具から放出される魔力で部屋の空気が心なしか淀んでいる。よくこんな所にいて平気なものだ。
バージルから一度ぶたれた若は、取り敢えず雑巾を持って来る、と一階へ向かった。

「…なにこれ?」

ルイスが赤と青の双剣に歩み寄り、拾い上げる。顔らしき何かが付いているのが気になったらしい。

『ほぉ、我らが気になったか小娘』

『見る目があるな、なぁ兄者』

『全くだ弟よ』

「ぎゃっ」

驚いたルイスは双剣を床にガッシャンと落とし初代とバージルの元へ退避。

「しゃべった!しゃべったよあれ!?」

初代は腰に手を当て双剣を睨む。

「おいお前ら、NO Talkingっつったろうが」

『む、済まぬ』

『しかし小娘よ、もう少し丁寧に扱ってはくれぬか。なあ兄者』

『全くだ弟よ』

「あ、しゃべれるんなら…」

ルイスが思い付いたように双剣へ近寄りしゃがみ込む。

「ねえ、この部屋にゴキブリいなかった?」

そいつらに訊くのかよ、と初代が内心突っ込むも、バージルが諦めたように首をふるふる振ったのでもう好きにさせた。

『ゴキブリとな?』

『ゴキブリとは、茶色っぽく、』

『触角が妙に長く、』

『異様に移動速度が速い──』



『そこに居るような虫か?』



……。

三人が固まり、ルイスがしゃがんだ体勢からベッドの下を覗き込んだ。

埃にまみれた身体は妙に油っぽくテカテカしており、妙に長い触角がみょんみょんと動き、

妙に素早くベッドの下から這い出して来た。


「…ぎゃあぁーーーー!?」

「うわ出たーっ!?」

「ダンテエェェェイ!!」

三者三様な事を叫び、部屋を抜け出した奴に先ずは青筋を立てたバージルが抜刀、次元斬するも当たらず、それより先に飛び出し階段を降りようとしていた初代が足元すれすれの出来事にバランスを崩し、その前にいた一番先にゴキブリを追っていたルイスにつんのめり、

「うわやべ、ちょっ、」

「きゃっ!?うわ、わっ、」

まさに一瞬の出来事。

ふたり一緒に足を踏み外し、何とか初代はルイスを腕の中に捕まえ、何だ何だと部屋から出て来たネロが思わず目を瞑り、


「え、何ちょ、」


水の入ったバケツと雑巾を持った若の上に落下した。

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