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「はっはっはっ!ドブネズミ捕まえて来るなんてなぁ…大したもんだぜ」

「全く、大変だったんだからな」

盛大に笑う初代と、溜め息を吐くネロ。
ルイスはキッチンで手を洗っている。ご存じの通りドブネズミはバッチィのだ。
そのドブネズミは、路地裏にリリースして来た。今頃命が救われた喜びを噛みしめながら一心不乱にゴミ袋をかじっているのだろう。

「ネズミと言えばさあ」

若がソファーの上で言った。
自室にいた皆は、先程の騒動で降りて来ていた。そのまま何となく事務所に固まっている次第だ。

「ネズミとゴキブリって、何となくセットな感じするよな」

「不潔なイメージと大量に増えて不快な点は共通しているな」

珍しくバージルが若に同調し、そうそうそれ!と若がソファーから身を乗り出した、その時。


ダンッ!


と、床を思いきり踏みつけるような音がして、その一瞬後、


「うぎゃあああああぁ!?」


──ルイスの悲鳴が聞こえた。
皆何だ何だと顔を見合わせ、キッチンへ駆け込む。

「何だ!?どうした!」

若の顔を見たルイスは、視線を足にやり、目を見開いた。

「わっ、若!あ、あ、足、あしっ!!」

「え?足…?」

言われるままに足に目線をやる若。他の面々も若の足を見る。

若のブーツの爪先、そこから脛方向に前進しようとしている物体。

妙につやつやした茶色い体、みょんみょん動く長い触角。

昆虫類ゴキブリ科ゴキブリ目、俗称アブラムシ。全世界に3700余種、熱帯に多く、陰湿な場所を好む──要するにゴキブリである。

「────、」

その御姿を捉えた3秒後、若は絶叫した。

「うわああああああああ!?」

それを皮切りに、髭と二代目を除いて大騒ぎである。

「ぎゃあぁー!!ちょ、新聞紙!新聞紙!」

「バカうちじゃ取ってねーよ!!」

「おい動くな愚弟!逃げるだろうが!」

「無理だっつーのおおぉ!!」

「やだああこっち来たああああ!!」

デビルメイクライは未曾有のパニック状態に陥った。
悪魔相手でもこんな騒ぎ方はしないだろうに、デビルハンターが揃いも揃ってなんて絵面だろうか。
二代目は溜め息を吐き、髭は苦笑い。

「はあ…全く」

やがて二代目はエボニーを取り出し、キッチンをちょろちょろするゴキブリに向かって引き金を引いた。

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