7
目を覚ますと、初代に抱っこされた状態でいた。彼は眠っている。
「しょ、だい…?」
「……ん?」
寝ぼけまなこを擦りながら呼ぶと、初代が目を覚ました。
「ルイス…よく眠れたか?」
頭を撫で、優しく問いかける初代に、ルイスは元気に頷いた。
「…ありがとう!」
「え?」
ルイスは初代の膝から飛び降りると、テーブルの上の小説に目をやった。
「わ、これあったんだぁ」
「ああそれ、バージルが持って来たんだ」
頷き、ハードカバーの本を手に取ってひとまず自室へと向かう。
皆に、ありがとうを言いたい気分だった。
それと、髭にはすぐ治ったとは言え腕を折った事を謝らなければならない。
「初代、ありがとう!」
階段を上がる途中で振り返り、再び感謝を口にして勢い良く駆け上がる。
あの夢は、見なくなる事は恐らくないのだろう、否、見なくてはならない。あまりに辛いものでも、忘れてはならない。見る度に、そう言われているような気がするのだ。
でも、大丈夫だとルイスは確信していた。
ここには皆がいる。皆が手を伸ばして笑いかけてくれる。
それだけで、あの悪夢にも耐えられる気がした。
初代は溜め息を吐く。が、顔は笑っていた。
「…ま、一件落着か」
見送った後ろ姿は、いつも通りのルイスだった。
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