6
ルイスは夢を見た。
またか、とルイスは泣き出したいような衝動に駆られた。怖いのだ。
しかし、今回は何かが違う。
部屋は見覚えのあるものだが、燃えていないし壊れてもいない。
暖かくて、明るい。
「(…?)」
周りを見回す。テーブルがあって、その上にはケーキや、色んな料理が並んでいた。
『わあーっ、すごいすごい!ごちそうだぁ!』
『そんなに急がなくても無くならないよ』
銀髪の、ふたりの少年。自分と同い年くらいに見えた。
「(あ、…あれは…)」
『さ、ダンテ、バージル。座って座って』
『はあーい!』
『はい』
金髪の美しい女性。
「(…母さん!)」
勿論、声など出ない。
『あ、父さん!お帰り!』
『お帰りなさい、父さん』
「(…父さん、?)」
そう言えば、父であるスパーダの名前はよく聞くが見た事はない。そちらを見ると、銀髪を後ろに撫で付け片眼鏡をかけた男性がそこにいた。
優しそうだ。と、素直に思った。
『やあ、遅くなって済まないね。じゃあ始めようか』
スパーダが椅子に座り、ダンテとバージルがロウソクの火を吹き消した。
『ダンテ、バージル。誕生日おめでとう』
『おめでとう。…これは、お誕生日プレゼントよ』
エヴァが後ろ手から取り出したのは、ふたつのアミュレット。金と銀のチェーンが付いている。
『わあ、キレイだね、バージル!』
『うん…すごいね、ダンテ』
そっくりな顔で目をキラキラさせるふたり。
『さあ、どっちがいい?仲良く決めるのよ』
『ねえ、バージルはどっちがいい?』
『…僕、こっち』
バージルが金のアミュレットを取り、じゃあぼくこっちー!とダンテが銀のアミュレットを取る。
そこで、ふたりがスパーダとエヴァを見た。
『…ねえ、ルイスのは?』
『ぼくたちだけじゃ、ずるいよ!ルイスも、きっと欲しいと思うよ』
「(え、…あたし?)」
思いがけず登場した自分の名前に、ルイスは驚く。
スパーダは笑って、上着の内ポケットに手を入れた。
『ははっ、ふたり共ルイスが大好きだからね。そう言うと思ってたよ』
「(あ!あれ…)」
そう、スパーダが取り出したのは見覚えのあるチャームリング。
細かい装飾の施された、シルバーリングだ。
スパーダが、こちらに近付いて来る。と、同時に視線が変わる。寝ているように、天井と、上から覗き込んで来る優しい父親の顔が見えた。
『ルイス、プレゼントだよ。…生まれて来てくれて、ありがとう』
「(…父さん、)」
首に細いチェーンの通されたチャームリングが掛けられる。
ルイスは笑って、目を閉じた。
「(ありがとう、父さん)」
とても暖かくて、眠気がした。夢の中の筈なのに。
意識が溶ける寸前、闇の中で声がした。
──ルイス。
生まれて来てくれて、ありがとう。
それは、皆の声だった。
「(そうだ、早く…帰ろう)」
ダンテと、バージルと、ネロ。
皆が、早く起きろと頭を撫でてくれているような気がした。
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