5
デビルメイクライの扉を開けると、皆が心配そうな視線を向けて来た。
「ただいま」
「お帰り、…」
ネロが物言いたげにしつつも、小さな声で言った。
「朝飯、キッチンに置いとくから」
「分かった」
初代もまた小さな声で応え、ルイスを抱えた状態でソファーに座った。
全く離そうとしないルイスに苦笑して頭を撫でると、髭がコートを脱いで近寄って来た。
それをルイスにかけてやると、ウインクを残してキッチンへ向かった。朝食を採りに行ったのだろう。
「初代」
若だ。手にトーストを持っている。
「ん?」
「ほい、あーん」
「ちょ、要らねえよ馬鹿」
トーストを口に入れようとする若の手を制し、ルイスが起きるからとなんとか止めさせた。野郎、しかも自分にあーんされるなんて寒気がする。
「…ルイス、怖い夢見たんだって?」
ふざけるのを止めた若が、トーストを初代に手渡しルイスの頭を撫でた。初代はトーストをかじり頷いた。意外に出来立てだった。
「俺たちがいるからな」
優しい目でそう言うと、若は自室へ戻って行った。
次に、バージルが一冊の本を手に近付いてきた。絵本ではなく、挿し絵が多めで子供向けの短い小説だ。
「起きたら渡してくれ」
そう言えば、同じタイトルの小説をこの間読んでいた。続きが気になるが見つからない、とむくれていた。バージルが図書館で探したのだろうか。
初代が頷くと、バージルは無言で去って行った。
「………んぅ」
心なしか、ルイスの表情が和らいで来たように思えた。そこにネロが現れた。マグカップを持っている。
「飲む?コーヒー」
「お、サンキュ」
初代がマグカップを受け取り、一口飲む。ネロが左手でルイスの頬を軽くつついた。
「んむぅ…」
「こらこら」
苦笑する初代。ネロはいたずらっぽく笑って、空のマグカップを受け取りキッチンへ戻った。
「お前も寝たらどうだ?」
「二代目」
二代目がコートを掛け直してやりながら言った。
「ひとりじゃ、寂しいだろ」
小さく笑いながら言う二代目に、初代は笑い、そうだなと返事をして目を閉じた。
[ 27/42 ][*prev] [next#]