4

ルイスを追い込むのは予想外に骨が折れた。身体が軽いからなのか足が早いのだ。
どうしたものかと髭は考え、懐に手を伸ばした。

右手に白い銃──アイボリーを構えて引き金を引いた。もちろん当たらないようにルイスの足元ぎりぎりを狙って。

「わっ!?」

驚き、飛び退くルイス。そこに現れた人影──

「捕まえた」

「!?わ、わ、わっ」

初代だ。ルイスの脇の下に手を入れて、それから身体を反転させて抱き上げる。じたばたするが効果はなく、やがて諦めたのかぱったりと大人しくなった。

「………」

「?」

どうしたのかと顔を覗き込むと、ひどく眠そうであった。瞼が半分以上落ちている。

「昨日、寝れなかったのか?」

ルイスはゆるゆると頷く。

「着くまで寝てていいぞ?」

すると、いやいやするように首を振った。目を擦り、尚も首を横に振る。

「…やだ」

「何でだ?」

髭が訊くと、ルイスは強烈な眠気から、非常に舌足らずな声でなんとか答えた。

「だって、ねたら、…ゆめ、みちゃう、…」

「夢…?」

ルイスは頷き、泣きそうな顔で初代のコートの襟を掴んだ。

「……あたし、いいこに、するから…きらいに、ならないで…」

「え?」

初代と髭が意表を突かれた顔をし、そこでルイスは体力の限界だったらしく身体の力が抜けるのを初代は感じた。
小さな寝息が聞こえる。

「ルイス…?」

「…多分、自分でも何がしたいかよく分かんなかったんだな」

髭が顎を擦りながら呟いた。

「──それだけ、怖かったんだろ」

それを聞いた初代は、無意識にルイスを抱く腕に力を籠めた。

力の抜けた身体は、しかし初代のコートを離すまいと強く握り締めていた。

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