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「ただいまー」
「あ、おっちゃん!おかえり」
「おかえり、メシ出来てんぞ」
「あいよ」
髭がテーブルにつき、ネロがオムライスを運ぶ。全員分がテーブルに揃ったところで、食べ始める。ネロの得意料理のひとつであるそれは卵がとろとろで、ケチャップが多めにかかっている。
「そういや、お前ら何してたんだ?」
オムライスを頬張りつつ、ネロが双子とルイスに訊く。
「あぅ、えーと…」
「アルファベットの書き取りだ」
ルイスが縮こまる。ネロは首を傾げた。
「え、何で?」
「………………」
ルイスはスプーンをくわえ固まる。
冷や汗だらだらである。そんな様子を察してか、ネロはまあいいや、と追及をやめてくれた。ルイスはほっとすると共に、やっぱりあれ間違ってたんだ、でもどこが間違ってるのか分からないから何ともかっこ悪い、と肩身が狭くなる。
「ふーん、書き取りねえ」
髭はオムライスを飲み込み、独り言のように呟いた。
そんな髭を不思議そうに見ながら、ルイスは最後の一口をすくって口に入れた。ネロの作るオムライスはすごくおいしい。いや、ネロは料理上手なため何でも上手く作ってしまうのだが。
「ごちそうさま!」
椅子から立ち上がり、キッチンへ皿を持って行く。デビルメイクライでの決まり事だ。
そう言えばまだコートを着ていたのに気付いたルイスは、階段を上がり自室へ向かった。他の皆は家でもコートを着ている事が多いが、ルイスはあまり着ない。
階段を駆け上がって行ったのを見ると、二代目がどこから取り出したのか正方形のメモ用紙──事の発端となったルイスの書き置きをネロ、初代、髭に見せた。
「「……………」」
眉を寄せ視力が悪い人のように紙を見つめる初代とネロ。髭は顎を左手でさすって呟いた。
「やっぱなぁ…教わんないよな」
バージルが小さくため息を吐く。
「流石にこれは酷い」
「まあな、…今の内にどうにかしとかないと後々困るしな」
でもまあ自分の名前が書けるだけ幸いかもな、と髭が頭の後ろで腕を組んだ。
若がうーんと頬杖をつき、きゅぴーん。何か思い付いたように頭をがばりと上げたのは、バージルが顔を上げたのと同時だった。
「あ?」
「何だ」
顔を見合わせる双子。ルイスが二階の部屋のドアを開ける音がした。
「じゃあ、この件は若とバージルに任せるか」
二代目がまとめ、皆が頷いた。
ルイスが階段を駆け降りて来て、そこで話は打ち切りになった。
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