2

お留守番できる、とは言ったものの。

「う〜〜〜〜、」

ルイスはソファーの上でごろんと寝転がり唸った。現在午前10時。


暇だ。


「若、まだねてるしなあ…」

仕事で疲れているのだ、起こす訳にはいかない。
しかし暇だ。する事が全くない。
誰も居ないのは予想外に暇だ。
以前の自分はどうして過ごしていただろうか、もう思い出せない。

二代目は、近場なら出掛けてもいいと言っていた。
ルイスは起き上がり、足音を立てないようにそっと階段を駆け上がる。

自室に入り、黒いコートを羽織る。内ポケットにフレスベルグが入っているのを確認して、キャスケット帽を被る。
部屋を出て、また静かに階段を駆け降り事務所机に近寄った。

「んーと、」

出掛けるならば、書き置きをする約束だ。
引き出しを開けると、一番始めにメモパッドとペンを発見。取り出し、剥がす。

「………」

ボールペンを見つめる。
紙に擦りつけてみる。当然何も書けない。

「??」

困った顔であちこちいじる。クリップ部分を引っ張る。あ、なんか動くぞここ!と更に引っ張ると、

ばきっ。

「…折れちゃった…」

どうしようどうしようとおろおろするも、まあ仕方ないねと三秒で立ち直る。妙な所はダンテに似ているようだ。
その直後、頭の部分をノックする事でペン先が出る事を発見。やったねー!と喜んだ所で次のステージへ。

前にネロが何かを書いていたのを見かけた事がある。その時の記憶を頼りに握ってみるが、どうもしっくり来ない。

「あれ、…うーん?」

首を傾げる。
そもそも字を書いた事なんて記憶の彼方だ。
仕方ないのでがしっと握る。それが所謂子供握りと言うのは勿論知らない。
ようやく紙に字を書き始める。
書き置きとは何ぞやと今更考えるが、まあ出掛ける旨を書けばいいだろうと解決。

「………こんなんだったっけ」

書き終えてたっぷり30秒悩み、ルイスは匙を投げた。
まあいいや、多分大丈夫。多分。

ルイスはドアを開けて外へ出た。






若がようやく目覚めた時、時刻は11時半。
あ゛ー、と掠れた声で唸り、頭をがりがり。目を擦りのろのろベッドから這い出し、ゴトン!
──落ちた。

「ってぇ!?…あぁ?何してんだ俺…」

スタイリッシュさの欠片もない。
衝撃で完全に覚醒した若は、あくびをしながら部屋を出た。


事務所へ降りると、誰もいない。出掛けたのだろうと思うがルイスもいない。
テーブルの上にラップのかかった皿が置いてあった。サンドイッチだ。
若はそれをぱくりとくわえ、事務所机の上に何か乗っているのが見えた。

「…ん?何だこりゃ」

サンドイッチを飲み込み、紙を手に取る。
ついでに、机の上にはクリップ部分が破壊されたボールペンもあるが無視した。俺知らない。
正方形のメモ用紙には大胆かつ前衛的な──要するに、きったない字が綴られていた。


"Ill go auto. Lewis"


若は閉口した。

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