2:Ill go auto. 1

ルイスは7時に目を覚ました。至っていつも通りである。
二階にあった小さい物置小屋を掃除して必要最小限の家具を置いただけのこの空間が、ルイスの部屋だ。寝る時以外はあまり来ないが。

同居人たちに買ってもらった、以前のと同じような服に袖を通す。黒いコートも買ってもらったものだ。内ポケットには拳銃型の魔具であるフレスベルグが常に入っている。
ブーツ型の、これまた魔具であるフェンリルを履いて、髪をとかす。ちょっと引っ掛かる。
そうしたら今度は髪の毛を耳の後ろで2つに結ぶ。
よしできた、と小さな鏡を前に呟いて部屋を出た。

いつもルイスが一階に降りて来る頃には朝食は出来ている。

「おはよう!」

「おはよう、ルイス。これ置いてくれるか?」

「うん」

ネロに渡されたサラダボウルをテーブルに乗せる。二代目たちが次々朝食をテーブルに乗せていき、髭が二階から降りて来る。

「おはようさん」

「あ、おっちゃんおはよう」

ぽんぽんルイスの頭を軽く叩き、椅子にどかりと座る。位置的な問題なのか皆ルイスの頭を撫でる事が多い。
ルイスがやって来てから早数週間が経過し、すっかり見慣れた朝の風景だが、今日はひとつ違う。

全員が椅子に座り──空席がひとつ。
若だ。

と言うのも、昨晩仕事が入り、帰って来たのが午前3時。だから今日くらい寝かせておこうと言う皆の配慮で、若は今自室で夢の中だ。
朝食を食べ始め、髭が一言。

「俺、今日人に呼ばれてっから出かけるわ」

「ん、分かった」

ネロが頷いた。
続いて初代が手を上げ、

「あ、俺ガンショップで取り寄せしてたから行って来る」

すると次々に二代目もバージルも用事で出かけると言う。珍しい日もあるもんだとネロが思っていると、事務所の黒電話がけたたましく鳴り響いた。ネロが一番先に立ち上がる。

「Devil May Cry…ん?……。ああ、分かった。行く」

「合言葉付きか?」

受話器を置くネロに髭が訊き、ネロは頷いた。

「ルイスひとりになっちゃうな」

「あたし、大丈夫だよ」

牛乳を飲み込みルイスが返す。
床につかない足をぶらぶらさせると、バージルがこら、と制した。テーブルから見えない筈なのに何でなんだろうとルイスはいつも思っているが、案外見えているものである。

「まあ暇だったら近場なら出掛けてもいいぞ、俺は昼頃帰る予定だ」

二代目が言い、ただし、と付け足す。

「その場合は、書き置きして行け。若もしばらく起きないだろうから」

起きてお前が居なかったら慌てるだろうからな、とコーヒーを飲む二代目に、わかった!と元気よく返事をしてルイスはサンドイッチの残りひときれを口に入れた。

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