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朝食の準備があらかた終わり、テーブルに料理が並べられる頃に若が階段を降りて来た。
「ふあ…はえーなぁ」
「お前が遅いんだ、ほらメシ出来たから座れ」
サラダを持って来たネロが呆れたように言う。
「へーい…あ、ルイスおはよう」
「おはよう、ねぼすけさんだね」
「あちゃー」
端から見て気の抜けそうな会話を繰り広げるふたりをよそに、テーブルには次々料理が並ぶ。
サラダを始め、(あれから持ち直したであろう)スクランブルエッグ、ソーセージ、ピーナッツバターのトースト。
「ルイス、牛乳でいいか」
「うん」
バージルがコップに牛乳を注ぎ、テーブルに置いた。
「ほら、ルイスも座れ」
二代目が促し、椅子に座る。高くて足がつかない。
ぐぅと腹の虫が鳴き、皆が食べ始めたのに習いルイスも食べ始めた。
ピーナッツバターのトーストはびっくりする位美味しい。夢中でがじがじ食べるルイスに、急がなくたって逃げねえぞと初代が苦笑い。
「あ、なあなあ二代目、ケチャップ取って」
「ん。…おい、掛けすぎだ」
「こんなん全然だって。おっさんも使う?」
「いや、初代が使いたいって」
「そう?ヘイパス!」
「サンキュー!」
「こら若、投げんなって!」
賑やかな食事、だがルイスの頭上には?が大量に浮かんでいた。
「ん?どした、ルイス」
「??」
ルイスは口の中のトーストをもぐもぐ、ごくんと飲み込み、二代目を指差す。
「──にだいめ?」
「ああ、」
それな、とネロがコーヒーを一口飲んで説明する。
「ほら。ダンテが四人もいるだろ、ややこしいから呼び方を決めたんだ」
一番年上のダンテが『二代目』。
前髪の長い、若いダンテが『初代』。
髭の生えたダンテがそのまま『髭』、またはおっさん。
ルイスの元々知る一番若いダンテが『若』。
ルイスはなるほどと頷いた。
「まあ、適当に呼んでくれて構わねえさ」
髭が言い、また食事は賑やかなものに戻る。今度はルイスも交えて。
ああ、
「(今度はちゃんと、俺達の手、届いたんだな)」
ルイスの笑顔を見て、若はふとそんな事を思ったのだった。
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