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ルイスははたと目を覚ました。壁掛け時計を見ると、朝の6時。
いつも何時に起きているのかはいまいち分からないが、こんなに早くはないと思う。一日分程寝たから目が覚めてしまったのだろう。

ベッドから上体を起こし、ぐぐっと体を伸ばす。

「(ベッドで寝たの、ひさしぶりだなぁ)」

いつもいわゆる路上生活だったので、不思議な気分だ。
部屋を見回してみると、ベッドサイドのテーブルにキャスケット帽と拳銃型の魔具、フレスベルグが置いてある。服は見当たらない。が、多分あのワンピースは着れないだろう。

「ぉわっ、」

ベッドから降りると、冷たいものが素足に当たった。びっくりした。
銀色のブーツ、フェンリルだった。

とりあえずそれを履く。素足にはちょっと辛いが、裸足で歩き回る訳にも行かない。
フェンリルは、魔力を流し込まない限り魔具としては機能しない。そうでないと、常時身に着けているものなのでぶっちゃければ疲れるのだ。フレスベルグはそうでもないが。
そこで、ふとルイスは考えた。
この部屋は明らかに誰かが使っている様子である。が、昨日は全員出て行った。今この部屋にはルイスひとり。

──じゃあ、この部屋の持ち主はどこに?

「!」

ルイスは慌てて、しかし物音を立てないように部屋を出た。
廊下には下へ降りる階段がある。駆け降りると、フェンリルがコツコツ音を立てる。真ん中には大きなダイニングテーブル、そして端の方にソファーが見えた。黒い革の大きなソファーから、脚がはみ出ている。

「…ん?」

「あっ、」

ルイスが近づくとその人物──一番落ち着いた雰囲気のダンテが、身体を起こした。

「早いな、目が覚めたのか?」

間違いない、このダンテがあの部屋の持ち主だ。とルイスは確信した。

「う、うん。…あの、ごめん」

「?」

ダンテは不思議そうな顔をする。

「ベッド…寝れなかった」

「そうなのか?」

「んん、ダンテが」

そう言うと、優しく笑って頭を撫でられた。

「いい、気にするな。…それより、シャワーでも浴びて来たらどうだ?さっぱりするぞ」

「え?んっと、…」

何となく躊躇いの気持ちが生まれ、言葉を濁していると、階段がギシギシ音を立てた。

「ふあぁ、…」

「ああ、ネロ。おはよう」

「ん、おはよ…」

掠れた声で答えたネロは、髪をがしがししながら階段を降りる。黒いタンクトップにジーパン姿のネロに、ルイスは一瞬目を見開いた。と同時に、だからか、と昨晩の彼の様子に合点がいった。

右腕が、どう見ても人間のではない。

「…おはよう、」

「ん?…あ、おはよう…」

ネロはルイスを見た瞬間、しまった、と言う顔をした。しかしルイスは何事もなかったかのように、

「あのね、シャワー使っていい?」

「あ…、ああ。いいよ、そこだから」

左手で指を差す。右腕は体の後ろに隠してしまった。ルイスは極力そっちを見ないように、ネロが言った方向へ足を向ける。

「ネロ、使い方を教えてやってくれ」

「え、でも、」

二代目ダンテは、小さく笑った。

「今分かった。ルイスはいい子だから、大丈夫だ」

それに、と続ける。

「悪魔だらけの搭をひとりで登ったんだ、悪魔の右腕だって怖くないさ」

その言葉に、ようやくネロが笑った。

「──あんたらの妹だしな」

踵を返し、バスルームへ向かうネロの後ろ姿に、二代目はそっと安堵した。

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