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以前、バージルが空間転移とかその辺のジャンルの本を読んでいた時があった。

「ほぉ、ンな本よく見っけたな」

「図書館で見つけた。…誰も読まんから貰って行け、と言われた」

髭が感心したように言い、バージルが本から顔を上げぬまま答えた。残りページは僅かだ。やはりこのテの本は胡散臭いのか誰にも借りられず隅っこで埃を被っていたらしい。

「で、何か分かったか?」

バージルは本を閉じる。読み終わったようだ。

「まあ、少しな…だが、机上の空論と言った所だろう」

髭は顎をさする。

「そういうジャンルに入っちまうと、大体そんな感じだろ。どんなんだ?」

バージルはふむ、と少し考え、紙とペンを要求した。髭が引き出しを引っ掻き回し始め、バージルの額に青筋が浮かぶ。

「…何故そんなに時間が掛かる」

「いやあ、あんまり使わないもんでね」

と言いつつ次に出てきたのは、

「貴様は紙とペンよりもコンパスの方が使うのか」

おかしいだろう、大体この職種でコンパスなんかいつ使うんだ。見た事ない。

「おかしいな」

駄目だ、今度ネロに言って整理させないと。バージルはこめかみを抑えた。
そうしている間にも何だ何だと皆が集まり出し、結局全員に説明する事になった。髭がようやく正方形のメモパッドとノック式ボールペンを発見しいっぺんにバージルへパス。

「ナイスキャッチ!」

「投げるな阿呆が」

べりっと一番上を剥がし、ボールペンで紙の真ん中に長い線を引き、端に『A』と書く。

「まず最初に断っておくが、これはあくまで『そう言う力が発生した』のが前提だ」

「?」

皆よく分からないがとりあえず頷いた。バージルがペン先で線を指す。

「これが今…つまり、髭やネロのいる時間帯だ」

線の真ん中に〇を書く。

「ここで、例の前提が要る。非常に強い影響力を持った、人智を越える程の何らかの力が発生したとする」

バージルは、何と線を三本増やした。線は四本になった。三本それぞれの端に『A'』と書かれる。

「…はい?」

初代が呟く。若とネロは目を点にし、ええぇと漏らした。バージルは一番上の線の左端、二番目にはそれより若干右側、一番下には右端にそれぞれ〇を書き、矢印を引っ張り上から三番目、つまり最初に引いた線に集結させる。

「…いやいやいや、無理矢理すぎんだろ」

つまりまとめると、その『何らかのものすごい力』が発生した為に、元々ひとつだったこの時間軸が分裂してしまった。らしい。何ともアバウトな話である。

「だから言ったろう、机上の空論だと。大体こんな力が存在する筈が──」

「(ん?待てよ、)」

人智を越えるようなものすごい力、ものすごい、…

ネロは固まり、次に髭を見た。髭もネロを見ている。髭は肩を竦めた。

「…いや、案外そうでもないかもな」

「はあ?」

「何言ってんの、おっさん」

髭はネロにアイコンタクト。ネロはあーと髪の毛をがしがし、

「うーんと、…」

こうしてデビルメイクライの面々は小さな都市で起きた偽神事件の概要を知る事となった。約一週間前の話である。


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