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何じゃそりゃあ、とルイスは思った。
兄の話によれば、ここはダンテの経営するデビルメイクライと言う事務所で(その話は聞いたことがある)、しかしなんと未来の事務所であると言う。
そして、更に仰天したのが、この赤コートの男達が全員『ダンテ』──つまり、兄と同一人物だと言うのだ。話がぶっとびすぎてて何がなんだか。
「じゃあ、みんな、あたしの事知ってるの?」
一様にダンテ達が頷く。妙な気分だ。
でも皆兄だと思うと、不思議とほっとした。
見てみると、ルイスの知るダンテが一番若い。明らかに父親くらいの年齢のダンテもいる。
ああ、なんだこれ。
「腹は減ったか?」
一番落ち着いた雰囲気のダンテが、優しく語りかけた。ルイスは首を横に振る。腹を抉られたばかりで何かを食べる気もしない。
「それじゃあ、朝までもう少し寝ろ。今日は疲れたろ」
ベッドに戻され、頭を撫でられる。
「詳しくは明日の朝にしよう」
「そうだな」
銘々に頷き、おやすみ、と頭を撫でてから部屋を出ていく。
そこで気付いた。
ひとり、知らない人がいるのは分かっていた。
その人は、何故だかポケットに突っ込んだ右手を出そうとしなかった。
ルイスに軽く挨拶して、他のように頭を撫でたりしない。それはともかくとして、不自然なまでに右手をポケットから出そうとしなかった。左側についたドアノブをわざわざ左手で開けており、ルイスは首を傾げる。
「(どうしたのかな)」
しかし考えていても仕方ないし、眠気もあれだけ寝たと言うのにぶり返して来た。
ともかく、ここは安心して眠って良い場所なのだ。ルイスは欠伸をひとつして目を閉じた。
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