0405
2012/04/05 17:51

「ネロ!…あっ、」

キリエは思わず手で口を覆い、歩調を緩めた。
教団の建物の裏、誰も来ない上陽当たりのいい場所。
ネロが見当たらない時、大抵ここにいる事はキリエしか知らない。クレドでさえ知らないのだ。キリエはちょっとした優越感を感じていたりする。

クレドが探していた為、ここかと思い来てみると案の定いた。
しかし、芝生に寝転がり眠っているのは流石に予想外だった。

いずれにせよ起こさなければならないのだから、息を潜める必要も足音を忍ばせる必要も本来全く無いのだが、キリエの優しい所であると同時に好奇心の働いた結果である。

「…まだ寝てる?」

ネロの側に寄り小さく呟くが、何の反応もない事を確認すると、ネロの隣に寝転がった。

「(わあ…)」

間近で見てもやはり端整な顔立ちをしている。
いつもよりネロが大きく感じてどきどきした。

「(…ちょっとだけ、ちょっとだけだから平気よね?)」

そろそろとネロのコートの襟を握り、胸板に鼻をくっつけるように近寄った。

「(あ、いい匂い… …やだ、私ったら…)」

途端に恥ずかしくなって来たが、離れ難いのも事実で。
暖かい日差しとネロの匂いが心地良くて、目蓋が下りていく。
完全に意識が途切れる瞬間、赤くなったネロの顔が見えた気がしたが、もうキリエには分からなかった。



「(うぉ、ま、マジかよ…!)」

ネロはパニックになっていた。
最初キリエが呼んだ時にはもう目が覚めていたが、頃合いを見て驚かそうと思い狸寝入りをしていたら、これだ。

動けない。
動いたらキリエを起こしてしまう。それはまずい。
じゃあもう一度寝るか、と言ったらそんな事が出来る訳がない。

「(うわあああ俺心拍数上がりすぎて死ぬかも…)」

キリエの寝顔をこれ以上見ていても心臓がもたない。勿体ないとは思うが、キリエに心臓の音が聞こえないように祈りながら再び目を瞑りひたすら寝たふりを続けた。


結局キリエが起きたのは夕方で、当然それまでネロも動けなかった訳で、その後二人まとめてクレドに叱られたのは言うまでもない。



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