0310
2012/03/10 17:20

また来た、とバージルはカビ臭い歴史書から目を離さずにそう思った。今月三回目だ。

「ダンテ、いないの?」

「見れば分かるだろう」

バージルは目で文字を追う事を止めない。今月三回目の来訪者である少女レディは、あっそ、とだけ返事をして室内に入って来た。
何の断りもなくバージルの隣に腰掛けるレディを咎める事は、しなかった。
彼女がこうして何度も仕事の話と称してデビルメイクライを訪れる理由も、何をする訳でもなく自分の隣にただ座っている理由も、なんとなく察しがついていたからだ。

だからと言って、以前の自分ならにべもなく追い返していただろうが、それが何故か出来ないのは、一度自分も彼女と同じそれを感じてしまったからなのだろうか。

「…──ダンテ、来ないね」

「そうだな」

これが彼女に対するシンパシーなのか何なのかと訊かれたら、それは分からないが、取り敢えずバージルはレディの存在を許す方向で読書を続けていた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -