あとは夏油の名前書いてね、と任務の報告書を差し出したあの子は、早々にペンを放り投げ共同スペースに置いてあったお菓子に手をつけた。

「この間五条が任務着いてきてくれたんだけどね、街中でキャーキャー言われて調子乗ってウィンクかましてたの。顔がいいから様になってね、もう」
「むかついたの?」
「うん。五条がクズじゃなかったら、わあ、同級生かっこいいー。で終わってたんだけど。五条なんだかんだいい奴だから憎めんけど」
「ふうん。それ、美味しい?」
「美味しいよ、ずんだの餡入ってる」
「甘い?」
「そんな甘過ぎないよ。あっ、夏油はウィンクできる?」
「できるよ、そりゃあ」

二個目を口に入れたあの子が、頬を膨らませたまま聞いた。夏油は頬っぺた破裂しそうだな、と思いながらも楽しそうだと自分も頬いっぱいにお菓子を詰め込んでみた。

「夏油も綺麗な顔してるもんねえ。ウィンク一つで生活できそう」
「私の顔好きなのかい?」
「えっ、顔綺麗な人間嫌いな人いる?」
「照れるなあ」

褒められて気分が良くなった夏油は、自分ももう一つお菓子を手に取って、止まる。ウィンク、してあげようかな。
夏油傑は、同級生には大層甘かった。
殺伐としたこの業界だ、年相応に馬鹿やれる同級生が好きだし、大事だった。

ぱちり。

「…夏油?」「…どう?様になってた」

閉じた目を開けると、三つ目のお菓子を膝の上に落として瞬きを繰り返すあの子。

「…夏油、眠い?」
「…違う、眠くない」
「えっ、何、なにそれ」
「うぃんく…」
「えっ?なに、夏油、もっかいやって」
「もうやらないよ、手離して」

夏油はやけになってあの子の膝に落ちたお菓子を奪い、口に放り込んだ。



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