ぐう。
日付をこえるちょっと前。任務を終えたばかりで疲労困憊の身体はギシギシと錆びついた動きに感じる。おまけにお腹は大きく悲鳴をあげた。
カップ麺でも何でもいい、何かすぐに食べれるものを確保できれば、と覗いた寮の食堂にいたのは夏油だった。

「おかえり、お疲れのようだね」
「ただいま~、もうねポンコツ呪術師には荷が重いのなんのって!夏油何してんの、夜食?」
「あー、うん。私はあまり燃費が良くなんだよ。君は」

炊飯器の目の前に立つ夏油は少し恥ずかしそうに頬を掻いて、ぱかっ杜炊飯器の蓋を開けた。そんな夏油に「えへへ、実は食いっぱぐれまして」と返す。すると、カップ麺を求めていそいそと棚を物色する私の隣に、夏油がしゃがみ込んだ。

「どしたの」
「…あのさ、おにぎりくらいしか作れないけど」
「えっ、夏油握ってくれるの」
「私で良ければね」
「男前で優しい同級生に出会えて幸せ」
「はいはい、握っておくから着替えておいで」

ありがとう色男!と叫び、スキップしながら部屋に戻り、またスキップしながら食堂に戻った。

「ね、夏油」「うん?」

夏油の大きな手で握られたおにぎりはそりゃあもう大きい。
心なしか緊張した面持ちの夏油に見つめられたまま半分程食べ進め、口を開いた。

「お塩、振った?」「え、振っ…あれ」

夏油は自分用のおにぎりにぱくついた。

「あとさ、夏油」「…うん?」

今度は何だ、と顔を強張らせた夏油と目線が合う。

「もしかして、あそこにあるお皿、おにぎりの具?」




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -