唐突に目の前で繰り広げられるそれに、五条悟は瞠目した。
「うー」やら「あー!」とやる気なさげに叫ぶ家入を優しく片腕で押さえ込んだ夏油が、土下座をするあの子に大きく叫ぶ。
「生殺与奪の権を他人に握らせるなっ!」
「えっ、何?これなに」
「ハァ~五条知らないの?嘘でしょ、嘘すぎ、知らないの?ええ~」
「駄目だよ、サトルサマは俗世に疎いんだから」
「アッ、やば。硝子おでこ切っちゃった、治して、お願い」
「任務外で作った傷は自分で治せ」
硝子に縋り付くあの子と、やれやれと言った態度で「補助監督着くって」と携帯を振る夏油。五条はひとりだけ話についていけず、唇を尖らせた。せっかく同期皆で任務なのに、なんで俺だけ話分かんねーの。五条は、楽しい事を全部教えて欲しかったのだ。教えてもらった上で、皆で楽しみたかった。彼もまだ高校生である。
「おやおや、ゲトウさん。ご覧になってよ、御親友、拗ねてましてよ」
「おや、本当だ」
今度こそ五条は中指をピッ!と立てて天高く掲げた。
家入はめんどくせー、と呟き足早に車に向かった。
「もう、しょうがないね、悟。漫画貸してあげるから後でおいで」
「ちぇっ」
「明日には最強の呼吸出るね」