「夏油、どうしたの」

向こうから歩いてくる彼は、腕を押さえ、普段の飄々とした態度からは想像もつかない程しょぼくれていた。
眉間には少しの皺、口は真一文字に結ばれている。

「注射、打たれたんだ」
「ちゅう、しゃ」
「そう。呪霊の体液浴びて、肌が少し爛れたから。硝子が、注射した方が治るのが早いって。無理矢理」

恨めしそうに顔をぎゅっ、と顰めた夏油は、いつもよりずっと幼く見える。
年相応というやつだ、これ。

「…夏油、注射嫌いなの?」
「嫌いとかじゃなくて、自分の体に針が刺さるんだよ、危機感湧くだろう。何というか、ほら」
「…注射、怖いんだね」
「ちが、違う!怖いわけないだろう!」

口をぱくりと動かした夏油は、拳をぎゅっと握って鳩尾に押し付けると「怖くない…!」と苦々しげに呟いた。
なんだ、なんだそれ。

「夏油、意外とかわいいね」



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