食堂で、火にかけたヤカンを見つめながら手を擦り合わせる。
「何してるの、授業もうすぐ始めるだろう」
「お、夏油おはよ」
「おはよう、寒いね、今日」
「ね~お布団持って授業受けたいよ~」
「温かい飲み物でも作って持ってくの?」
ふわふわとぽかぽかな湯気を出すヤカンを指差し、そう聞く夏油は寒そうにこちらに寄ってきた。
「ううん、これつくるの!」
じゃじゃ~~~~~ん!と小さめの湯たんぽを出すと、夏油は目をぱちくりさせて湯たんぽを手に取った。
「なるほどね。貸して、危ないからお湯入れてあげるよ」
「かたじけない~!夏油もいる?もう一個あるよ」
「…そう?貸してもらおうかな、私も寒いのあんまり得意じゃないんだ」
「ココ山の中で寒いもんね」
空の湯たんぽをもう一つ手渡すと、夏油はそれにもまたお湯を入れてくれる。
「よし、夏油!今日は私と机くっつけて、机にブランケットかけてこたつごっこしよう。五条あたりが羨ましがるから自慢してやろ。硝子も寒がりだから一緒に入れてあげよ」
「ふふ、いいね、それ。楽しそうだ」
笑った夏油は、急いで行こうかと湯たんぽを一つ渡してくれた。ぽかぽかだ。
「夏油、あったかいの、いいね」
「…そうだね」
遅刻しないよう、二人で誰もいない廊下を走る。まるで普通の高校生になったみたいで、楽しくて、自然と笑みが溢れた。