《 白んだそれが以下略 》 | ナノ




006

「何か必要な物はあるなら言えよ。」

ベッドと机とタンスと、最低限の物しか無い部屋。ひどく白くて、殺風景だ。この家の中でここだけ浮いているように感じるのは、私の気のせいだろうか。

「僕の部屋は、ここと逆側の一番奥だから。」

部屋中を眺め透かしつつ、岸辺さんの言葉へ適当に相槌を打つ。そんな私の姿に彼は小さくため息を吐くと、

「僕にはまだ仕事があるんでね、君は勝手にしていろ。」

言って岸辺さんは部屋から出て行く。
勝手にしていろと言われてもなあ、することが無いよこの部屋。何か居た堪れなくなったので取り敢えずベッドへダイブ。寝返りを打つ、時計は9時を指していた。やれやれ、早いけれどもう寝ましょうか。本当は、岸辺さんに聞きたいことが山ほどあるけれど。お仕事があるんじゃ無理だなあ、これ以上怒らせたく無い。明日はどうしよう。私の住んでる場所や、私の親は誰で何処にいるのかとか、私の仕事、そうだ仕事!この年齢じゃあ働いてる筈だ。まさかニートってことは無いだろうな‥‥?

ああ、思考回路がショート。毛布へ顔を埋めるとふわふわで、無性にお腹がきりきり痛くなった。いやはや、大変だな。なんせこの二十数年間をいっぺんに遡らなきゃあいけないんだから。
そう、岸辺さんとのことも、勿論。


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