《 へんてこりんな 》 | ナノ
第漆夜

生き血を吸う、中地が赤のマント、牙、鏡に映らない、不老不死、ニンニク、日光で灰になる、棺、心臓に杭を打たれると死ぬ、聖水で死ぬ、十字架で死ぬ、てめーは俺を怒らせて死ぬ、‥‥‥

怪力無双、変幻自在、神出鬼没、
吸血鬼。


「ばりばりの現代っ子がそんなもの信じるかってんだぜ。」
「あ?今目の前に存在してるじゃねえか。」
「しかまるさん、アイタタタですよ。」
「じゃ、どうすりゃ信じる。」
「証拠は?」
「ンあ。」

しかまるさんはぐいと片手で口を横に引っ張った。
いー。

「‥‥確かに一般と比べて犬歯が鋭いほうなのは認めますけど。」
「なら、それでいいだろ。」
「冗談。」

こんなことでいたいけな女の子を傷付けた罪が許されるとでも?胡散臭さ最骨頂。完璧ギルティに決まってんだろ。首を横に振ってみせれば、しかまるさんは溜め息を吐く。めんどくせー、のかな。

「じゃあ一番手っ取り早く、実際血ィ吸ってるとこ見せれば流石に信じるだろうけど、今これ以上お前から血液抜いたらやべえだろ。」
「見たかないけど、そりゃあそこまでされれば信じるしか、‥‥は、私の?」
「だから、また次な。」
「え、次、そもそもなんで私が貧血なこと知って、」
「まあ、原因俺だから。」
「え、ええー?」


私の?貧血が?しかまるさんのせい?

「ちょっくら血、頂いてるんだわ。」

悪りい悪りい、何故か拝むようなポーズでぺこりと頭を下げるしかまるさんへ私が放ったのは、

「ど、どろぼー!!」
「うん、まあそうだけどよ、」

しかまるさんは居心地悪そうに身じろぎをして、苦笑する。こいつ絶対私のこと頭の中で馬鹿だっつって笑いやがったな。顔でわかる見てればわかる。めっちゃ腹立つ。

「ぶはっ、」
「あッ、てめえ堪えていれば海のように広い心で許してやらんことも無いと思ってたのに今決めた、アウト、全身全霊懺悔しろ、ちゃんと謝りなさい話はそれからだ。」
「お前、ほんと面白えのな。」

しかまるさんはその後しばらくの間笑い続け、対してそれを見る私は、やっぱりその笑顔に心臓がきゅうと痛くなったのでした。


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