携帯の充電するのを忘れた、遅刻ギリギリの自転車に乗ってる最中派手に転んだ、お小遣い使っちゃって毎月買ってる雑誌が買えない、妹に身長を抜かされた、夕飯が嫌いなシチューだった、大事にしていた漫画のページを自分で破いた、課題を忘れて居残りで、進路のことで親と喧嘩した、それから、…


私は自分のことがだいっきらいだ。
些細な事で馬鹿みたいに怒る自分に、涙を流す自分に、いつだって腹がたって仕様が無い。



「今日は、何があったんスか。」

2人の特等席である河原のベンチで、優しく優しく尋ねる声。

「‥‥テストで赤点取っちゃった。」
対して縋るように出た情けない声に、また目に涙が滲んだ。

「苦手な物理?」
「ううん、古文。」

そうすると、いつも自分に素直で快活に生きている彼は、嘘も偽りもなんにも無い感情をストレートにぶつけてくれる。
「えっ、だって名前、あんなに勉強してたじゃ無いっスか。」
「そう、そうだよ今迄に無いくらい勉強した。なのに赤点なんか、」


体育座りした膝に顔を埋めたまま、私はお決まりのセリフを吐いた。

「もう、私なんか生きてる価値、無いのかな。」

こんなこと言っちゃいけないって、我が儘も八つ当たりも承知の上のことだけど、


震える声で囁けば、彼が困った様に頭を掻く気配。
そして感じる体温。

「そんなこと言わないで。
俺は名前にずっと傍に居てほしいから、俺がずっと傍に居たいから、おまえが存在為るだけで、それだけでとんでもない価値があるってことを、もっとわかってくれよ。」

な?
確認するように、念押しするように言ってから、ちょっと照れたように笑う彼は。



私は自分のことがだいっきらいだ。
甘っちょろくて面倒臭い、頭も悪くてなんの取り柄も無い、こんな人間。

でも、それでもたった一つこれだけは、


「じょーすけ、」
「何スか?」


「私ね、私が仗助を好きになれたことだけは、自分のこと好きだと思えるよ。」



2015/03/18
ありがとう
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