!死ネタ
ちょうど一ヶ月前に、名前は死んだ。
死んだ、なんて、
なんて嘘くさい響きだと。
名前の死体を前にして、涙は出なかった。
式を執り行う最中周りの奴らが泣くのを見、不思議に思ったくらい。
特に葬式は何もなかった。
ただ、花に埋れた名前の顔の上にぱかりと開いた棺の窓を閉める際、これで顔を見るのは最後だと言われたのでいつものようにキスをしたら、アンコにぶん殴られて式場から閉め出された。
心配して出てきたナルト達が怖いものでも見た、みたいな、サクラなんか涙目になっていて、余程俺は酷い顔をしていたらしい。
それで終わり。
今のところ生活に支障は出ていない。
任務も相変わらず淡々とこなしている。
ただ、俺にあまり人が寄り付かなくなった。それでも良いと思っている。
今日で一ヶ月。
単純に考え2592000秒名前が存在しない間も、俺は、俺だけは生きたことになる。
生きてしまった。
家に帰る最中で計算して今更愕然とした。
俺は何で生きているんだろう。
なんだか、頭が朦朧とする、?
「ただいま。」
着いた家の中は真っ暗。
おかしいな、もう帰ってきているはずなんだけど。
「名前?どこ?」
リビング、キッチン、寝室、風呂、トイレ、洗面所、……、
家中くまなく探しても名前は見つからない。
「どうして?居ないの、名前。」
俺は寒い廊下に一人膝をつく。
頭の中で、何かがカチリと音を立てて嵌まった。
ああ、そうか、
気づいちゃったなあ。
震える手で、いつも身につけている御守りの中からひとつ、それは名前の葬式の日、あの冷たい銀のプレートにころころと乗っていた白の塊を内緒でくすねてきたものだ。
両手でお椀の形をつくった上にそれを置き、キスを落とす。
あの日してあげられなかったから。
「名前は、死んだのか。」
死んでしまったんだ。
もう、この俺の生きる世界には居ないんだ。
手の中にぎうと握ったものからは、
何の温度も感じ無くて。
存在しない、
永遠に会えない。
「は、」
やっとだ、
俺は、
「会いたい、」
もう叶わない。
ああこの涙が俺の世界をぜんぶ沈めてくれたなら、
そうしたらまた君に会えるだろうか。
2015/03/18