!現パロ
もぐもぐ、
カカシ先生がガムを食べている、
らしい。
らしい、というのは口がマスクに隠れてしまってまったく見えないから。
とはいえマスクが若干もごもごしているので咀嚼はしている、のだと思う。
目の前で人が追試受けてるっていうのに呑気な。
まあそれをあげたの、私なんですけどね。
先生は甘いものが苦手なのっていうのはリサーチ済み、プラス女子高生のお財布から出て痛く無い値段で、貰っても重たく無いもの、なんて考えたら、赤点を取るこの足りない脳味噌ではガムくらいしか思いつかなかったのだ。
追試のお礼です、って言って渡したら、思ったより喜んでくれたので嬉しい。
たかがひゃくいくらのガムなんて、先生のお給料なら幾らでも買えるだろうに、ありがとうと言って頭を撫でてくれた。この追試だって、引っかかっているのは私だけ、けれどわざわざ放課後の時間使ってくれて。わかりにくいけど、先生は優しい。
もぐもぐ。
片手でガムの銀紙を弄びながら、先生はいつものように、表紙にイチャイチャパラダイスとかいういかがわしい本を生徒の前で堂々と読んでいる。
こうやって私が先生を盗み見ていることは、ばれていないだろうか。
すこしどきどきしながら、追試の紙をシャーペンの先で軽くとんとんと叩く。
すると先生はぱたんと本を閉じ、丸まった銀紙をきれいに開いて、
え、
先生は、常に何をする時でも防護壁かのように外さないマスクをいともあっさり下ろし、紙にガムを吐いた。
丁寧に畳んで、薄くてついでに色素も薄い唇を、真っ赤な舌でぺろりと舐める。
う、わ
これはちょっと、
「どしたの名前。」
ぱっと顔を上げると先生がとても近い距離に居た。すでにマスクはいつもの定位置に引き上げられたあと。
「欲情した目してる。」
先生の垂れた目がすうっと三日月のように弧を描く。
がぶり、
気が付いた時にはマスク越しに肩を噛まれていたので、この口からはなんとも情けない声が漏れたのだった。
2015/03/23
優しくなんてないよ