最近、眠れないんです。


いえ別に、不眠症だとか睡眠障害だとか、そんな大事では無いんですけどね。

ただ、


ただ、私が夜ベッドに入ってから、ちょうど一番眠りが深くなるであろう時間帯に、ノンレム睡眠とでもいうんでしたっけ、ええ、そのタイミングでちょうど、何故かお風呂場で音がするんです。

最初は勿論気付きませんでした。
が、たまたまトイレに行きたくなって起きた時に、ちゃぽん、て、あきらかにおかしいぐらい音がしたので、変だなあ、とまあ、その程度ですけど。

ホラーとか、そういう類のものを駄目ってわけでも無いのですが、それでもやはり、怖いものですね。
その日は布団を被って朝まで過ごしました。

日が昇ってからお風呂場を見てみましたけど、特に変わったこともなく、余計それが。


で、眠れないんです。



まあ先程怖いといいましたけど、それが2週間ほど毎日毎日続くともう慣れる、というか、流石に良い加減にしてくれのいうのが今の本音です。

とにかく寝れないんです。

任務にも支障が出ますし、そろそろ安眠したいんです。


だから、今晩真相を、確かめようと思います。






深夜2時半。

ベッドの中で息を殺して待っていれば、いつものように水音が聞こえてきました。

私はそうっとベッドを抜けて、そうっとそうっとお風呂場へ近付きます。
家中真っ暗闇、やけに自分の心臓音だけが大きく聞こえました。

電気はついていません、相変わらず水音はします。

私はごくりと唾を飲み込んで、電気のスイッチとお風呂場のドアノブに手を伸ばし、そして同時に動きました。


ばんっ、と勢い良く開けたドアのさき、照らされたそこに膝をついて居たのは、


「‥‥は、たけ、上忍?」

「あら、」

見つかっちゃったかー、そう言って頭を掻いた逆の手に上忍が握っていたのは、以前泊まり込みの任務の際無くして、多少残念だと思っていたそこそこお気に入りのマグカップ。

そこに入っていた水が、ちゃぽんと音をたてました。



ききたくない、この人が何をしていたかなんて。

「‥‥はたけ上忍、何してたんですか?」

「んー、あのね、残り湯飲んでた。だって、勿体無いでしょ?名前がいっぱい溶けてるのに、ね。」

美味しいよ。

上忍は少し照れたように笑った。


それを見て、ぞわあ、と、背中を何匹もの虫が競争して駆け上って来たような。
夜お風呂場の物音を発見したより比べものにならない恐怖と、単純な整理的嫌悪感。

「上忍、気持ち悪い。」

「!、もっと言って」



ああ、この人は、


2015/03/18
どうしたらいい、どうにもできない
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