※暴力表現あり



「名前、名前には何にも無いね。名誉も誇りも、自分自身すら。すっからかんでがらんどう、中身の無い人間、君のことさ。」
「ど、どうしたの、イルーゾォ?」

床に這いつくばったまま、怯えるように揺れる瞳。光の無いそれに、背筋はびくびくと痙攣した。

「ん?名前は本当に最低だなあと思ったわけ。君には何にも無いくせに、そうやっていちいち呼吸をしてさ、意味がない、どうして、どうやって生きていけてるの?俺にはまったくさっぱりわからなくてね、わかりたくもないけれど。」
「なな、なんにも無くは、無いよ?」
「‥‥へえ?じゃ、君には何があるって言うんだ?そのちっぽけな体と足りない頭で、俺に依存して生きているくせに。」
「そう、そうよ、私にはイルーゾォが居るわ。」
「は?」
「えへへ、私の世界で一番大切なものよ、ね、イルーゾォ、貴方が。」
「あのねえ、」
「な、なあに?」
「もうやめろよ、その媚びた目、鼻につく喋り方、うっとおしい。可愛い、とでも思ってんのか?思ってやってるんだ?勘違いも甚だしいぜ、は、そこまでいけば才能だな。迷惑なんだって、言わなきゃわかんないわけ?あったま悪いな。ほんと、君って面倒くさいにも程が有る。
‥‥。はー、疲れちゃったなあ、俺。」

首をぐるりと一回転し目だけ向けて睨めば、びくっと体を竦ませる名前。

「なんかもう、いい。」
「へっ?」
「ね、名前、さよならしようか。」
「えっえっ。」
「もう飽きた。楽しいことないし、君と居て、俺が得るもの何かある?何にも無いんだよ、それこそね。君は与えられるばっかりで、俺はマイナスになるばっかりだ。」
「そんな、どうしようどうしようどうしよう、どうしようイルーゾォ。」
「なに。」
「私イルーゾォにそんなこと言わせたなんて、ほんと、うう、わ、私、私今、すごく消えたい、し、死にたい。死んだ方が良い?」

ぶわあああっ、体を甘い痺れが駆け抜ける。まるで電撃のように、稲妻の如く。
しにたい、しにたい、虚ろな目で狂ったようにぶつぶつ唱える名前を見て、次第にズボンは膨らみを増していった。

「あ、あア、うぐ、うあぁ、ね、イルーゾォ、イルーゾォ、イルーゾォってばあ!?!!」

声に反響してびりびりと震える真っ暗な部屋の中で、俺に向かって手を伸ばす。それを緩く払いのければ、しかし簡単に彼女は崩れる。
ガラガラ、中身がないから壊れるのはいとも容易なこと。

「嫌だよお、嫌だ嫌だ嫌だいやいやいやいや、イルーゾォ、いて、そばにいて、居てくれないと死んじゃうよお。」
「死なねえよ、死ぬわけねえだろ。」

ため息をつき、その大袈裟に振動する体を強く抱きしめる。骨が軋むくらいに。
すると、彼女は幼い子供のように泣くんだ。
俺は舌打ちをしながら、そのまま彼女のその薄い腹へどすんと一発、流石、綺麗に鳩尾にはいった。

「!?がっ、ううえっ!」

涙を床に落としながらげえげえと嘔吐く姿は、見ていて本当に辛そうだ。

「ね、死にそう?死ねそうかな、まだ足りないか、ねえ?」

俺はげらげら心底楽しそうに笑いながら、名前の髪をひっ掴んで持ち上げて、その絶望しきった顔を見た時。びくびくびくっと俺の体が気持ち悪く震えた。そうしてついにズボンの中に射精した、最高に気持ち良かった。


君の"死にたい"に俺は興奮した。感情を失ったその目に映る世界はどんなものだろう?
ああ、考えただけでゾクゾクする。


「名前、俺のこと好きだろ?」


目の前に名前の顔を吊る下げて、吐くものがもう無いのか胃液を口の端から垂らす彼女は、それはそれはしあわせそうに笑う。

「すき。」


「それならさ、」



俺の為にもっとしにたくなって。









2015/03/18
ごめんね、こんな性癖で
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