短編 | ナノ



ぱっくりぱっくりと彼女の目の前から消えてなくなるケーキ。ケーキバイキングをしているこの場所ではその光景はさほど珍しくはなかった。

「・・・よく食べていられるな」
「どうして食べないでいられるかの方が不思議」

彼が尋ねればそれを質問で返す。アヤナミはそんな南子に嫌気がさしていた。

二人は性格から趣向から何から何まで正反対であるが、これでも付き合っている。今日は仕事が久しぶりに休みとあって、南子がどうしてもケーキバイキングに行きたいとねだったためアヤナミが仕方なく折れた。だが決してお互い嫌っているわけではない。むしろ、仕事場で驚かれるほど仲が良く、愛し合っている方だ。しかし趣向の違いのせいで、どちらかがどちらかに振り回されることになるのはいつものことだった。今日もそう、甘いものが大好きな南子。甘いものが苦手なアヤナミ。さすがにバイキングとあって、目の前で気持ち悪いほど糖分を摂取する姿に酔っていた。

「そこまで食べられると吐き気がする」
「ブラックコーヒーをいっつも飲んでるアヤナミの方が吐き気を催すけど」
「あとどれほど食べれば終わる」
「んー・・・全種類は試食出来たから・・・あといつものおいしいのを全部食べようかな」
「・・・つまりあと1時間も私をここにいさせるつもりか?」
「これを機にアヤナミも甘党になれるかもしれないよ」
「断る」
「今スイーツ男子って流行ってるのに」
「結構だ」

哀しそうな表情をする彼女も、ケーキを食べればまた笑顔に元通り。何故こんな趣味の合わない女を愛してしまったのかアヤナミは自己嫌悪に浸った。

「ごちそうさまっ」
「帰るぞ」
「あっちょっと!」

アヤナミは南子の手首を掴むと足早に店を出た。

「ねえってば、・・・アヤナミ!」

ぴたりと止まるアヤナミに合わせて南子も止まる。

「そんなに嫌だったの?」
「・・・」

南子からはアヤナミの表情は見えない。アヤナミは静かに握っていた手を離した。

「やはり私とお前では無理なのだ」
「なに・・・が?」
「何もかもが正反対の私とお前とでは、つりあわぬ」
「・・・そんなことないよ」
「だが、」
「アヤナミは私のこと嫌いになったの?」
「それは・・・」
「私はアヤナミがだあいすき!」
「っ、」
「付き合う前に言ったじゃない、私たちは正反対だけど、お互い補ってこうって」
「・・・ああ」
「今回はちょっと反省してる。アヤナミに少しでも甘いものを好きになってほしかったから、いじわるしちゃった。まあこの前のつまんない図書館デートの仕返しでもあるけど」
「・・・これからも続けていけると思っているのか?」
「・・・もちろん」

アヤナミは呆れて溜め息をつく。南子は真っ直ぐな目でアヤナミを見つめる。絶対に別れないという目で。

「・・・わたしの我慢がもつまでだな」
「ええー私だって我慢してることだってあるのに」
「私とお前とでは我慢の限度が違うだろう」

さっきまで険悪な雰囲気であったのが嘘のように、二人は仲良く(会話の内容は別だが)また歩き出した。今度は手と手を繋いで。

「アヤナミー」
「なんだ」
「私、アヤナミを好きになったとき、ぴったりだと思ったんだよ?」
「・・・?」
「だってさ、 ―――…」

「ああ・・・そうだな、」









-----キリトリ-----

夜漆さまからのお題提供ネタで甘いものが苦手なアヤナミさま
アヤナミさまって付き合うとか手を繋ぐって単語似合わない(笑)
神視点の書き方にしてみましたがどうなんでしょう?難しk(ry


 

<<
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -